東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
今回は株式会社の会社設立と定款のはなし。
ちょっとマニアックな論点になります。
定款で株主総会決議の内容を記載することが多いです。
そのときに定足数をどう捉えるか、重要になります。
特に中小零細企業の場合は定足数の定め方で会社の運営方法に影響を及ぼすこともあります。
なぜ定足数の定め方で会社の運営方法に影響を及ぼすのか?
あなたの疑問にお答えします。
株式会社の定款 議決権の定足数を考える 会社設立後の会社運営を見据えて
定足数が問題となる場合とは?
ひとり会社で株主がひとりだけであれば定足数のことは問題はありません。
株主が複数いる場合、例えば、友人同士で会社を作った場合や、最初はひとり株主だったが、その後出資してもらい株主が複数になった場合は注意が必要です。
なぜなら持株比率によっては、株主総会の議決権の定足数の決め方次第で、会社の経営に影響を及ぼすことが多いからです。
早速普通決議から見ていきましょう。
普通決議の定足数をどう捉えるか?
結論は、中小零細企業の場合、普通決議の定足数は従来通り、「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」にすべきです。
結論から書きましたが、株主総会の普通決議について触れておきます。
決算の承認など、後で記載する特別決議以外のものを承認するときは普通決議で行います。
(一部特殊決議・特別特殊決議もありますが、ここでは省略します。)
普通決議は、会社法第309条第1項で
議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数を持って行う
とされています。
決議要件を加重することは可能ですし、定足数を排除することも可能です。
大企業の場合は、株主が大勢いることから、定足数を排除する場合が多いです。
ただ、中小零細企業が定足数を排除してしまうとトラブルを生じてしまうおそれがあります。
中小零細企業の場合は、会社法の規定通りに定足数を残しておくほうが望ましいです。
なお、取締役の選任(又は解任)については定足数の排除は議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1までしか緩和できないことも併せて注意してください。(会社法第341条)
中小零細企業の場合、特別決議で定足数を緩和させない
特別決議は、定款変更など会社にとって大事な内容を決議するもの。
まず、株主総会の特別決議の決議要件は、会社法第309条第2項で
「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う」
となっています。
定足数要件については、定款で3分の1まで緩和させることが可能です。
大企業なら定足数の緩和はありえますが、中小零細企業で株主総会の特別決議の定足数の緩和はトラブルのもとになります。
例えば、株式を半分ずつもっていた場合、定足数を3分の1とかにすると、一方株主だけで議決権を行使できてしまうのです。
これだと、会社の経営は安定しません。
中小零細企業の場合、株主総会の特別決議の定足数は軽減するべきではないのです。
まとめ
ある会社の定款の雛形を見ていると、意味もなく定足数を排除したり軽減したりしています。
定款は会社の事情に併せて内容を決めるもの。
とくに株主総会の普通決議と特別決議の定足数の軽減は要注意です。
株式会社も合同会社も定款作成で困ったら専門家に聞きながら作成するといいでしょう。
あなたの会社経営が安定するためにも・・・
今回は
『株式会社の定款 普通決議や特別決議の定足数を考える 会社設立後の経営の観点から・・・』
に関する内容でした。
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参考書籍
会社法定款事例集―定款の作成及び認証、定款変更の実務詳解
田村 洋三 日本加除出版 2015-08-01
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