会社の代表者が変わった場合、印鑑届書の提出は必要?
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
会社の設立登記や解散登記の際には法務局に代表者の届出印を提供する必要があります。
その書類が「印鑑届書」です。
印鑑届書は会社設立や解散登記の申請の他にも添付しなければならない場合はあります。
登記申請と同時に印鑑届書を提出しなければならない場合の一つに、会社の代表者(代表取締役・代表社員・代表理事)が交代する場合があります。
今回は、会社の代表者が印鑑届書を提出する場合に焦点をあてます。
なお、法律が改正され、印鑑届書の提出は任意となりましたが、書面で引き続き登記申請する場合は従前どおり印鑑届書の提出が必要です。
会社の代表者が変わった場合、印鑑届書の提出は必要?
会社の代表者が変わるときは印鑑届書は提出が必要?
任期満了で代表取締役が退任する場合、新しい代表者の印鑑届書の提出が必要でしょうか?
答えは、登記申請を書面でする場合には必要です。
添付書面もオンラインで申請する場合については印鑑届書の提出は任意です。
なぜなら、会社の印鑑届は会社の代表者から提出する必要があるから。
つまり、会社のトップが変わる以上、登記の申請権限のある方も変更しなければなりません。。
登記事項に変更が生じた場合の会社の登記申請は、会社の代表者が申請します。
なので、会社の代表者が変わった場合、印鑑登録の変更をしなければならない理由をご理解いただけるでしょう。
印鑑届書を出すのはいつか?
印鑑届書を提出するのはいつでしょうか?
答えは、代表者の変更の登記申請と同時に提出となります。
先程も書きましたが、オンラインで申請するときは印鑑届書は任意となります。
また、オンラインで印鑑届書の提出はできますが、そのときにオンラインで電子署名しないといけないのは代表者個人となりますので注意してください。
登記申請書には、申請人には新代表者を記載し、法務局に提出する印鑑で押印します。
司法書士に役員変更登記申請を委任する場合は、委任状に押印します。
印鑑届書の左上部分には、登記申請書もしくは委任状に押印した印鑑と同一のものを押印します。
前の代表取締役が使用していた印鑑と同じ印鑑を新代表者は使用できるか?
会社実印を前の代表者と同じものを利用できるか、会社の法務担当者や新代表者から質問を受けます。
答えは旧代表者が使用していた印鑑と同じものを利用できます。
旧代表者が使用していた印影が同じであっても、代表者が変わったのであれば、印鑑届書を提出します。
別に新しい会社の実印を用意して、今後新代表者はこちらの印鑑を利用するとのことで、印鑑届書に新しい代表印を届けることも可能です。
ただ、代表者が変更し新しい印鑑を登録印にするとき、以前使用していた会社の印鑑の処理をどうするか考えておく必要があります。
新しい代表者になって、後日別の登記を申請する際、前の印鑑で押印して登記を申請すると、印影が異なるという理由で、登記申請できなくなります。
印鑑の管理には十分に注意しましょう。
印鑑届書を出す場合、代表者の個人の印鑑証明書が必要です。
代表者の変更登記を申請する場合に、登記申請書に印鑑証明書を添付している場合は、登記申請書に添付してある印鑑証明書を援用することが出来ます。
以前から使用していた印鑑カードの引継ぎはできるの?
代表者が変わった場合、今まで使っていた印鑑カードをそのまま使うできるのでしょうか?
答えはできます。
ただし、以下のことをしなければ、印鑑カードを新代表者に引き継げませんので、注意してください。
印鑑カードを引き継ぐ際には、印鑑届書の申請書に、引き継ぎ欄があります。
そこをチェックして頂ければ、前代表者からの印鑑カードを、代表者が変わった後も使うことが出来ます。
逆に「印鑑カードを引き継ぐ」チェックしておかないと、従前の代表者のときに使用していた印鑑カードは使えなくなりますので、注意してください。
代表取締役の追加の際、印鑑届書で注意すべきことは?
現在代表取締役がAさんの会社で、事業承継のため、息子のBさんも代表取締役にする例にとります。
Aさんは引き続き代表取締役会長として残り、Bさんが代表取締役社長となり、Bさんが法務局に印鑑届をする場合、注意が必要です。
法務局に同じ会社で代表者が異なる場合、同じ印影を法務局に届けることができません。
なので、代表取締役変更登記でBさんが代表取締役就任し、合わせて、従前からの印鑑を用いて印鑑届書を提出するときは、同時にAさんの印鑑廃止届をする必要があるということです。
なので、Bさんが会社実印を届けても自動的にAさんの印鑑届が廃止にならないことに注意してください。
(ESG法務研究会2018年4月13日のブログを参考にしてください)
令和3年2月15日の商業登記改正について(令和2年12月19日追記)
令和3年2月15日に商業登記法の改正があります。
その際に商業登記法20条の規定が削除されます。
(印鑑の提出)
第20条1 登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。
2 前項の規定は、委任による代理人によつて登記の申請をする場合には、委任をした者又はその代表者について適用する。
3 前二項の規定は、会社の支店の所在地においてする登記の申請については、適用しない。
なので、商業登記法改正に伴い、印鑑届書の提出は法律上では義務ではなくなります。
しかし、おそらく、当分は書面で商業登記を申請することになる会社が多いと思われるため、商業登記規則で、書面申請の際の印鑑提出の条項が盛り込まれる予定となっています。
実際実務では、電子と書面がしばらくは並行して使われるのではないかと私は思っています。
私も先日ですが、代表者の変更で完全オンラインで登記申請をしましたが、そのときは印鑑届書は提出せずできました。
まとめ
会社の代表者が変更するとき、完全オンラインで申請する場合以外は、新たに印鑑届書を提出する必要があることを押さえておいてください。
印鑑カードも前の代表者のものを使用することが可能なので、引き継ぎたいときは印鑑届書の所定のところにチェックをするのを忘れないで下さい。
今回は
『会社の代表者が変わった場合、印鑑届書の提出は必要?[小さな会社の企業法務]』
に関する内容でした。
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