何も起きていない今だからこそ」家族の未来に向けてできること

はじめに:なぜ“今”なのか?

「まだ親は元気だから、相続なんて関係ないよ」

「そのときが来たら考えればいいでしょ」

そんな言葉を、日々のご相談の中で何度も聞いてきました。

でも、実際に“そのとき”が来てからでは間に合わないこともあるのです。

いま法律の世界では「予防法務」という考え方が注目されています。

これは、“問題が起きる前に法的な備えをしておく”という考え方。

医療でいうところの「予防医療」と同じ発想です。

ところが、相続においては多くの方が“事後法務”になってしまう現実があります。

つまり、「誰かが亡くなったあと」に初めて手続きを始め、バタバタの中で大きなトラブルや負担を背負うことになるのです。

今日は、「何も起きていない今だからこそ始めてほしい、家族の未来への備え」について、司法書士としての現場の視点からお話しします。

親が元気な今こそ、考えておきたいこと

実家の名義、確認したことありますか?

たとえば、ご両親がお住まいの家。

「名義人」は誰になっていますか?

もし親が亡くなった後、名義変更(相続登記)を放置すると、その不動産は相続人全員の共有名義となり、売却もリフォームも勝手にはできなくなります。

2024年からは、相続登記が義務化されました。

放置すれば過料(いわゆる罰金)の対象にもなり得ます。

しかも、兄弟姉妹で連絡が取りづらくなっていたり、すでに相続人が亡くなっていた場合、さらに手続きが複雑化するのです。


預金が凍結され、動かせなくなる?

もうひとつの“よくある話”が、親が亡くなった後に銀行口座が凍結されてしまうケース。

「葬儀費用を払いたいのに、親の口座からお金が下ろせない」
「残高はあるのに、相続人全員の同意が必要だと言われた」

…こうした事態も、準備していなかったがゆえの典型例です。


「争族」は仲のいい家族にも起きる

「うちは仲がいいから大丈夫」…と思っていたご家庭ほど、実は話し合いでこじれてしまうことも。

原因は、「あいまいなまま話さなかったこと」。

誰が何を継ぐのか、どう管理していくのか、“いざ”というときに決まっていないから、残された家族が困ってしまうのです。


予防法務とは、「家族を守る思いやり」

相続の備え=財産の話、と思われがちですが、本質は、「残された家族に苦労をかけないための準備」です。

たとえば――

  • 不動産の名義を確認しておく

  • 家族で将来の話をしておく

  • 財産の一覧(通帳・保険・不動産)をつくっておく

  • 遺言書を書くかどうかを考えておく

これらは、問題が起きる前にこそできることです。

問題が起きてからでは、専門家に頼んでも時間や費用がかさむばかり。

だからこそ、“何もない今”こそが、家族を守るゴールデンタイムなのです。


まとめ:始めるなら「今日」が一番早い日

相続という言葉を聞くだけで、「まだ早い」「うちは関係ない」と思ってしまう気持ち、よくわかります。

でも、相続の準備は、誰かが亡くなったときのための“優しさ”であり、**家族への“責任ある行動”**でもあります。

今、何も問題が起きていないからこそ、“今だからこそできる準備”があります。

相続という言葉を使わず、「家族を守るための法務の考え方」をお届けする予定です。

ぜひ一緒に学び、備え、そして“行動する”きっかけにしていただけたら嬉しいです。

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この記事を書いた人

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。