商業登記の申請で添付する株主総会議事録や取締役会議事録は原本でないといけませんか?[小さな会社の企業法務]

商業登記の申請で添付する株主総会議事録や取締役会議事録は原本でないといけませんか?

東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。

はじめに

登記申請する株主総会議事録や取締役会議事録は原本をつけないといけないのでしょうか。
できればコピーした議事録を添付したいのですが・・・(経営者からの相談)

登記申請では、原則議事録の原本を提出する必要があります。
ただし、原本還付手続きをとれば、コピーを付けて申請することも可能です。

株主総会や取締役会議事録には、登記に関連する決議の内容の他、登記に関係ない秘密にしたい決議や報告事項も盛り込まれています。

そこで、定款変更など株主総会や取締役会議事録が登記申請する際の添付書面となる場合、議事録の原本を添付しなければならないのでしょうか?

商業登記申請で添付する株主総会議事録や取締役会議事録は原本でないといけないのか?

登記申請のための議事録を作成することはできるのか?

商業登記法第46条第2項で、議事録の添付について以下のように規定されています。

商業登記法第46条第2項
登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。

まず経営者や法務担当者の皆さんに覚えていただきたいのは、商業登記に添付する議事録は、原本を提出しなければなりません。

そうなると、株主総会や取締役会で登記に関連する部分とそうでない部分が出てくる場合はどうでしょうか。

例えば、株主総会で、商号変更を含む定款変更決議が第2号議案で役員変更決議が5号議案だった場合です。
登記事項に関する部分だけ内容を詳細に記載し、残りを議題のみを表示した議事録を作成し提出することは許されるのでしょうか?

あくまでも登記申請で添付する議事録は、法律で規定されている内容を網羅してある議事録を添付する必要があります。
なので、全ての議案に関して書かれている議事録を登記申請のとき添付しなければなりません

したがって、登記に関係ない記載事項の一部を省略した議事録を作成して登記申請用として議事録を作成して添付することはできません。

繰り返しますが、商業登記で添付が要求されている議事録は、議案や記載事項をすべて盛り込んだものを添付する必要があります。

議事録は原本還付の手続をすることは可能か?

上記の考えでいくと、株主総会や取締役会の内容を全て記載した内容の議事録を登記申請のときに法務局に提出しなければなりません。

そうなると、会社によっては、秘密裏にする必要がある内容も含まれており、万が一関係者が閲覧請求した際、問題になるリスクも。

そこで、実務では、株主総会議事録や取締役会議事録で必要な部分をコピーして申請書に合綴し、申請のとき商業登記申請窓口に原本を提示して申請書に合綴したコピーと照らし合わせることで原本還付手続を行うことができます。

(先例)
原本とともに原本と相違ない旨を記載した写しを提出する場合には、原本還付を受けることができ、この場合の写しは、登記申請に不必要な部分を省略して作成することができる。
(昭和52年10月15日 民事四課第5546号回答)

なので、どうしても議事録が分厚い場合や秘密裏にしたい決議がされている場合は、登記に必要な部分を抽出した議事録のコピーを用意し、原本還付手続をするしか方法はありません。

実務では、大会社では、議事録は通常1通しか作成せず、登記申請に際しては登記に必要な部分をコピーし、原本還付手続をすることがほとんどです。

一方中小零細企業の場合は、議案数も多くないため、原本還付手続をする手間を省く趣旨で、議事録を2通作成し、うち1通を会社保管用、1通を登記申請用として行っていることが多いです。

原本還付手続きはどうすればいいのか?

原本還付手続きは、法務局の窓口で行います。

登記申請に必要な議事録のコピーは申請書に合綴し、原本を持参します。

登記申請前に窓口の職員と原本とコピーを提示し、ページと照らし合わせながら確認していきます。

職員の方が原本還付の部分に印鑑を押印したら、そのまま窓口に登記申請書類を提出します。

登記申請の際は原本を提出する必要はありません。

郵送で登記申請する際は、コピーに原本に相違ない旨を奥書きしたものと申請書を合綴し、原本とともに郵送します。

原本を返却する必要があるため返信用封筒(レターパックプラスが最適)を同封して行います。

まとめ

株主総会や取締役会で登記すべき事項が盛り込まれている場合、それらの議事録の原本を添付する必要があります。

ただ、議事録の原本還付の手続きをすることができるので、登記申請に不要な部分を省略した議事録を作成し、窓口で所定の手続をすることができるということを押さえてください。

今回は
『商業登記の申請で添付する株主総会議事録や取締役会議事録は原本でないといけませんか?[小さな会社の企業法務]
に関する内容でした。

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。

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