東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
会社法で「公開会社」と「非公開会社」の意味を知っておくことは、会社の組織をどのようにもっていきたいか、規模の面やコンプライアンスの観点からも大事です。
また、企業法務担当者や会社法が出題される資格試験においても「公開会社」「非公開会社」を知らないと、様々な影響があります。
数年前に、行政書士試験の直近合格者や最近開業した方向けに「株主総会」についてお話する機会がありました。
そのときに意外だったのは
- 取締役会設置会社と取締役会を置かない会社(非取締役会設置会社)の違い
- 公開会社と公開会社でない会社(非公開会社)の違い
を理解していなかった方多かったこと。
実は経営者も設立段階から会社をどう運営していきたいかによって機関設計を考えなければなりません。
そこで今回は
・非公開会社とは何か
・取締役会を置くべきかどうか
を公開会社の定義や取締役会を設置した場合に注意しないといけないことを含めて解説します。
公開会社と非公開会社の違いを知ることが会社法を知る第一歩!
公開会社と非公開会社の違いは?
よくテレビで「公開会社」を耳にする機会があるでしょう。
しかし、世間一般に思われている「公開会社」と会社法の「公開会社」の定義、概念は異なります。
会社法では、すべての株式につき譲渡制限を設けている会社が非公開会社で、それ以外の会社を公開会社といいます。
会社法では以下のとおり「公開会社」の定義があります。
(定義)
第2条第5号
公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
株式を上場していない会社は「非公開会社」と思ってください。
注意しなければならないのは、会社法108条で、譲渡制限付種類株式を発行することは可能ですが、一部の株式のみ譲渡制限株式を発行している会社は公開会社だということです。
(異なる種類の株式)
第108条
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
(1号から3号省略)
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
(以下省略)
非公開会社だと、何がいいのでしょうか。
一番大きいのは、機関設計。機関設計が柔軟にでき、取締役1名と株主総会で会社設立はできます。
つまり、株主兼取締役があなただけであっても会社は設立できます。
ひとり株式会社ができる根拠がこれにあるのです。
公開会社の場合、取締役会は必須、監査役も原則必須など機関設計が絞られます。
後述しますが、取締役3名、監査役1名、最低4名揃わないと取締役会設置会社は設立できません。
なので、会社設立に際しては、ひとり株式会社を含め、すべて非公開会社で設立します。
そして、定款に株式譲渡制限の旨の規定を設ける必要があるのです。
第三者が株主になることで経営に影響を及ぼすのを防ぐために、小さな会社は、株主譲渡制限の規定を置き、非公開会社にします。
取締役会設置会社と非取締役会設置会社との違いは?(非公開会社を例に)
多くの会社が非公開会社なので、このブログでも非公開会社を例に紹介していきます。
まずは取締役会設置会社で注意することを書きます。
先程も書きましたが、非公開会社で取締役会を設置する場合は、取締役が3名以上必要です。
さらに監査役も必要(業務権限を問わず)なので、最低4名いなければ会社形態は成り立ちません。
非取締役会設置会社だと、取締役が1名以上いればよく、監査役等の設置も任意です。
なお、公開会社は取締役会は必須で、非取締役会設置会社のように、取締役会を置かないとする機関設計はすることができませんので、注意してください。
取締役会設置の旨は定款の記載事項
取締役会を設置する場合、定款に取締役会設置の旨を定める必要があります。
会社設立当初は非取締役会設置会社でいき、会社経営が軌道に乗り、事業規模拡大を図るうえで会社の信用を高めたいときに取締役会と監査役を置くということもありです。
なお、監査役設置についても、定款の記載事項で、監査役の権限が会計監査限定の場合はその旨も定款の記載事項になります。
さらに会計監査限定監査役は非公開会社に限ってすることができることも注意です。
上場を目指しているのであれば、監査役の権限は業務監査権限まで含めるべきで、そうすることで、会社の第三者からの信用がより高まることになります。
動画でも公開会社・非公開会社の違いについて解説しました
まとめ
非公開会社の定義や取締役会を置くか置かないかを知っておくことが、会社設立の際も含めて大事なところになります。
会社設立段階から機関設計を意識しておくことが、設立後の事業規模拡大していく上で重要な戦略となります。
難しい部分ですが、段階を踏んで経営判断していき、信用を得たいのであれば取締役会設置会社とし、監査役を置く必要がある(業務監査も含めた)ことを経営者は意識してください。
今回は
『公開会社と非公開会社の違いを知ることが会社法を知る第一歩!』
に関する内容でした。
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