東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
毎週月曜日、メルマガを発行しています。
会社設立について、これから法人設立したいあなたにぜひ知ってもらいたい法律的なことをわかりやすく書いています。
おかげさまで、100名くらいの方にメルマガ登録していただいております。
今回、メルマガ購読者からの質問にお答えしようと思います。
なぜ中小零細企業は株式譲渡制限を設定する必要があるのですか?
株式譲渡制限を設定する意味は?
そもそも株式は、自分が所有していれば誰にでも自由に譲渡することができるのが原則です。
「株式譲渡自由の原則」とよばれるものです。
(株式の譲渡)
第127条 株主は、その有する株式を譲渡することができる。
大企業であれば、株式を自由に譲渡することで資金調達することができるのでいいでしょう。
しかし、中小零細企業だと株式を自由に譲渡できてしまうと、全く見ず知らずの第三者が株主になるリスクがあり、会社の経営に口を出してしまうことも。
そこで、株式の譲渡することを全面的に禁止することはできませんが、株式会社の承認を得ることで譲渡を認める制度があります。
これが株式譲渡制限と言われるものです。
株式につき譲渡制限を設けることができるというのは会社法2条5号にあります。
(定義)
第2条
5 公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
上記条文は「公開会社」を定義つけるもので、会社法における重要な区分となっています。
つまり、株式全部に付き譲渡制限を設けるか否かで、会社法の適用条文も異なってくるのです。
注意していただきたいのは、株式全部について譲渡制限を設けている会社が「公開会社でない株式会社」となり、株式のうち一部のみ株式譲渡制限を設けた場合は「公開会社」になるところです。
なお「公開会社でない株式会社」を「非公開会社」ということもあります。
「公開会社」と「公開会社でない会社」の違いは?
会社設立に際して、多くの会社は「公開会社でない会社」つまり、株式全部に譲渡制限を設けることがほとんどです。
譲渡制限株式にしておかないと、機関設計も柔軟にできず、任期の伸長など特例を受けることができなくなります。
多くの起業家は、定款に譲渡制限の規定があるだけしか意識していませんが、会社法にとっては「公開会社」か「公開会社でない会社」かで適用条文が変わります。
以下、相違点をまとめてみました。
公開会社 | 公開会社でない会社 |
・取締役会は必須機関 ・監査役は必須機関 ※なので取締役は3名以上、監査役は1名以上必要 ・監査役は業務監査権限がある ・取締役の任期は原則2年 ・株主総会の招集通知は2週間前 |
・取締役会は任意の機関 ・監査役は任意の機関 ※なので取締役1名以上入れば株式会社を設立できる ・監査役の監査の権限を会計に限定することができる ※会計限定監査役の場合、定款にその旨を記載し、登記事項となります。 ・取締役の任期は最長10年まで可能 ・株主総会の招集通知は1週間前(定款でさらに短縮可能) |
まとめ
今回はメルマガ読者の方の質問で、中小零細企業の株式会社設立時はなぜ「公開会社でない会社」にするかを受けて書きました。
意外と大事なところなので、これから起業するあなたはぜひ「公開会社」と「株式譲渡制限」のことは知っておいてください。
今回は
『中小零細企業は株式譲渡制限を設定するのが当たり前!でもなぜ必要?』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
昨今新規法人設立案件が増加しています。これからも新規法人設立は増えるでしょう。そのあたりを書きましたので御覧ください。
参考書籍
株式・種類株式<第2版> (商業登記全書)
森木田一毅,岡田高紀 中央経済社 2015-09-19
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