こんにちは、東京都江戸川区船堀に事務所を構える「相続」に特化した事務所、司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirijunshoshi)です。
目次
はじめに:実家が「安心」から「負担」になるとき
実家に帰ると、どこかホッとする。
玄関の匂い、畳の感触、親の変わらぬ笑顔――そんな「安心できる場所」が、将来突然「相続の現場」になるとしたら、どう思いますか?
司法書士として、私は多くのご家族の“その日”に立ち会ってきました。
そして、ある共通点に気づきました。
それは、「親が元気なうちは何も準備していなかった」というケースがほとんどだということです。
今、法務の世界では「予防法務」という考え方が注目されています。
問題が起こってからではなく、“起きる前に備える”という発想です。
しかし、相続や実家の名義、不動産登記などに関しては、多くの方がまだ「そのときが来たら考えよう」と思っているのが現実です。
第1章:実家の名義が“親のまま”だと、子どもが困る
相続手続きの中でも、最もご相談が多いのが「実家の名義の問題」です。
親が亡くなったあと、実家の名義が親のままだと、次のようなことが起こります。
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相続人全員の同意がないと売却できない
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兄弟の一人が行方不明・認知症だと手続きが進まない
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登記が長期間放置されると、相続人が10人以上になることもある
これらはすべて、「名義変更(相続登記)をしていないこと」が原因です。
しかも、2024年4月からは相続登記の義務化が始まりました。
不動産を相続したら、3年以内に名義変更しなければ、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性もあります。
●相続登記を放置して起こる具体的トラブル
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親が亡くなって5年、実家を誰が継ぐか決まらず空き家状態に
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固定資産税を誰が払うかで兄弟が揉めた
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売却を希望したが、相続人の1人が音信不通で売れなかった
これらのケースに共通するのは、「名義が親のままだった」という事実です。
第2章:「うちは大丈夫」が危ない理由
「うちは財産も少ないし、兄弟仲もいいから大丈夫」と思っているご家庭こそ、実は要注意です。
なぜなら、明確な取り決めがないまま相続が始まると、感情のズレが大きなトラブルにつながるからです。
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「あのとき、介護をしたのは私なのに…」
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「家をもらうなら、他の財産は均等にするべき」
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「話し合いなんて、聞いてない」
特に、実家しか財産がないという家庭では、「誰が住むか」「売るのか」「貸すのか」――といった判断で揉めがちです。
第3章:では、どうすればいいのか?準備の第一歩
相続対策=法律や税金の難しい話…と思っていませんか?
でも、最初のステップはもっとシンプルです。
●第一歩は、「実家の名義を確認すること」
法務局で登記簿を取り寄せれば、現在の名義人(登記名義人)が誰なのかがわかります。
「名義は親のままだった」
「祖父母のままで何十年も放置されていた」
…ということは、珍しくありません。
●次に、「親と将来のことを話すこと」
これが一番難しいと感じる方が多いです。
「縁起でもない」と言われそう、気まずい空気になるかも…。
でも、それでも私は声を大にして伝えたいのです。
「話せる今こそが、唯一のチャンスです」
第4章:親に“家やお金の話”を切り出す3つの工夫
話しにくい相続やお金のこと。
でも、ちょっとした工夫で驚くほどスムーズになります。
●① 親の不安から入る
「最近振り込め詐欺多いけど、大丈夫?」
「もし何かあったら、通帳とか手続きとか心配だね」
→「あなたのことを心配してる」という姿勢を伝えることで、会話の糸口が自然に生まれます。
●② 実例をきっかけにする
「●●さんの家、相続でもめたらしいよ」
「テレビで実家の名義の話やってたよ」
→“他人事のように”話すことで、親も受け入れやすくなります。
●③ 話のゴールは「親の意思を確認すること」
全部をその場で決める必要はありません。
まずは「親はどう考えているのか」を知ることが大切です。
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実家を誰に継いでほしいか
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預金や保険について何か希望があるか
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遺言は考えているか
こうした話を“少しずつ”共有していくだけで、将来のトラブルは大きく防げます。
まとめ:未来の「ありがとう」は、今日の一歩から
実家の名義を確認する。
親と「その日が来たときの話」を、少しだけしてみる。
たったそれだけで、未来のあなたや家族は、きっと安心できるはずです。
今はまだ、何も起きていないかもしれません。
でも、「何も起きていない今」こそが、行動できるベストタイミングなのです。
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