株主総会議事録の作成や押印で注意しなければならないことは?
東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
5月、6月は株主総会の開催が多い月。
理由は、日本の株式会社は3月決算が多いから。
大会社を問わず、中小零細企業も3月末を事業年度にしている会社が多いです。
これは、日本の年度が毎年4月1日から3月31日に合わせて決めていることも影響しています。
中小企業の場合は、税務署に申告する観点から2ヶ月以内に行うことが多いです。
株主総会を開催したら議事録を作成しなければなりませんが、その際に議事録に押印する印鑑はどうすればいいのでしょうか。
今回はその疑問にお答えするブログです。
なお、今回の内容は中小零細企業の観点から、非公開会社で非取締役会設置会社を想定します。
株主総会議事録の作成や押印で注意しなければならないことは?
定時株主総会はいつまでに開催する必要があるか
多くの中小零細企業で定款の規定により事業年度が終わったら3ヶ月以内に定時株主総会を開催する旨があります。
ただ、「はじめに」でも触れましたが、中小零細企業の場合、税務署に確定申告をするのは事業年度終了後2ヶ月以内です。
今回取り上げる中小零細企業で非取締役会設置会社のほとんどが事業年度終了後2ヶ月以内に定時株主総会を開く必要があります。
3月に決算期を迎える会社が多いので、実際に中小零細企業で定時株主総会が開催されるのは5月が多いです。
なぜ定時株主総会を開催する必要があるのか?
ところで、なぜ定時株主総会を開かないといけないのでしょうか?
それは該当する事業年度の計算書類(貸借対照表や損益計算書など)を定時株主総会で承認する必要があるから。
中小零細企業は、税理士に決算書類を任せ、そのまま税務署に提出することが多いです。
ただ、本来は定時株主総会で承認を受けた計算書類を税務署に提出しなければなりません。
あと、株式会社の場合は決算公告をする必要があるので、どうしても計算書類を定時株主総会で承認しないと正式なものにはなりません。
以上のことから定時株主総会の日時を決めますので、税理士から確定申告書類が揃う日を想定して、株主総会を開催するようにしてください。
多くの会社で税理士に書類作成をお願いしていると思うので、決算期が終わったら常に税理士と連絡を取り合いながらするといいでしょう。
なお、株主が1名とか少人数の場合、会社法319条のみなし総会の制度を使えば、実際に株主総会を開催しなくてもいいです。
ただ319条のみなし総会で行った場合も、会社法施行規則に基づき株主総会議事録を作成する必要があるので注意してください。
こちらの投稿も合わせて御覧ください。
株主総会議事録の押印者は誰か?
株主総会議事録を作成したら、議事録に記名押印する必要があります。
記名押印に関して、実は会社法や会社法施行規則には規定がありません。
ただ、多くの会社では定款で議事録作成と押印者について条項を設けています。
定款の定めで多いのは
- 議長と出席取締役
- 議事録作成者
が記名押印することが多いです。
訴訟における証拠の観点からだと、議長及び出席取締役に記名押印したほうがいいです。
実務では、中小零細企業の場合、代表取締役が議長も議事録作成者を兼ねることが多いです。
押印する印鑑は、議事録作成者は代表取締役になることが多いので法務局に提出している会社実印で押印します。
議長及び出席取締役が記名押印する場合、実務では議長代表取締役は会社実印を押印し、取締役は認印で対処します。
株主総会議事録の押印で注意しなければならないこと
議事録作成や押印について、原則は、定款の規定に基づき議事録を作成し、議事録作成者や議長、出席取締役が印鑑を押印します。
しかし、取締役会を置かない公開会社でない株式会社の場合、議事録に押印する印鑑で注意しなければならないことがあります。
注意するのは、取締役や代表取締役の役員変更のときです。
ここの部分については、令和3年2月15日から少し変わっている部分があるので、同じことが書いてありますが、必ず見るようにしてください。
1、新たな取締役が選任された場合で就任承諾を議事録で援用する場合
取締役会を置かない公開会社でない株式会社の取締役の選任の際に問題があります。。
取締役が選任され、席上就任承諾した場合、議事録に就任承諾の旨を記載し就任承諾書代わりにする場合は注意です。
定款に、議事録作成者が記名押印するになっていても、選任された取締役は記名押印が必要で、さらに押印については個人実印を押印する必要があります。
新たに取締役となった方は印鑑証明書が必要です。
さらに注意なのは、議事録に新たに就任する取締役の住所も記載する必要があること。
議事録は株主や会社債権者が会社に請求すればいつでも閲覧できるため、個人情報の保護の観点から、私は、別途就任承諾書を用意してもらいます。
なお、取締役会設置会社の場合、取締役の選任には印鑑証明書の添付は不要なので、議事録で就任承諾の旨を援用したとしても、新任取締役は議事録に実印を押印する必要はありません。
その場合であっても、議事録には住所の記載を忘れないようにしてください。
2、取締役会非設置会社で代表取締役を株主総会で選任する場合
非公開会社で非取締役会設置会社の場合、代表取締役を株主総会で選ぶ場合は注意です。
理由は、代表取締役を選定した書面には出席取締役全員の押印が必要だからです。
しかも、新たに代表取締役が選ばれた場合、出席取締役は記名押印した上で実印押印と印鑑証明書が必要となります。
なお、代表取締役を再任する決議で、代表取締役が議事録に会社実印を押印した場合は、他の取締役は実印は不要です。
補足(2020年定時株主総会を開催するにあたり)
2020年の定時株主総会については、新型コロナウイルスの影響により、どう開催したらいいか迷われている方もいるでしょう。
法務省から「定時株主総会の開催について」が公表されています。
また、経済産業省からも株主総会運営に係るQ&Aが公表されています。
新型コロナウイルスの感染拡大下における「株主総会運営に係るQ&A」を取りまとめました (METI/経済産業省)
中小零細企業の場合には、株主が少ないことから、会社法第319条の書面決議を活用されることをオススメします。
補足(2021年2月15日より議事録の押印に関するところが変わります)
令和3年2月15日より、登記申請の際の添付書面に押印する印鑑について、注意しなければならないことがあります。
上記でも触れましたが、法令上(会社法や商業登記法、商業登記規則など)押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない場合に押印する印鑑について、見直しが行われました。
上記規定がない書面については、押印の有無について法務局では審査を要しないことになりました、
しかし、非取締役会設置会社の場合、株主総会議事録に関しては、押印義務がある場合がありますので、以下の場合に該当する場合は、それそれ法令上で規定された押印が必要です。
- 非取締役会設置会社で株主総会で代表取締役を選定した場合
- 非取締役会設置会社において、各自代表取締役を選ぶ場合
上記の場合には、出席取締役全員の個人実印の押印を要します。
しかし、どちらの場合も、変更前の代表取締役が登記所届出印を押印している場合については、変更前代表取締役については法務局に提出している会社実印を、出席取締役は認印を押印します。
なので、実務では、先程も触れましたが、代表取締役の選定決議がなくても、代表取締役は法務局に届けている印鑑を議事録に押印することが多いです。
まとめ
株主総会の議事録押印については、定款の規定に従って行います。
ただ、代表取締役を株主総会で選ぶ場合は、定款の規定にかかわらず、一定の場合を除いて出席取締役全員の実印が必要なことがあることを認識してください。
今回は
『株主総会議事録の作成や押印で注意しなければならないことは?』
に関する内容でした。
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株主総会議事録が数枚になる場合、契印が必要かどうか、そのあたりをまとめましたので是非御覧ください。
参考書籍
議事録作成の実務と実践 鈴木龍介/稲垣裕行 第一法規 2017年10月17日頃 売り上げランキング :
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