東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
最近株式会社の設立は、法務省の雛形をダウンロードしたり、某会社でデータを入れ込めば設立登記に必要な書類を作成したり出来たりして便利です。
そうはいっても、やっぱり定款の規定は自分の会社にあったものでないと、後々トラブルが起こります。
今回は定款の規定のうち、株主総会の決議のうち「普通決議」について私の考えを交えて紹介します。
株式会社設立時の定款 普通決議の定足数に注意!
普通決議の定足数を定めるにあたり注意すべきことは?
第309条第1項
株主総会の決議は、定款の別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
株主総会の決議は、会社法で特別決議等で決議しなければならないと記載されている事項を除き、原則普通決議で行います。
普通決議の要件は条文に書かれているとおりですが、多くの会社が定款で定足数を排除する規定を設けています。
定款で株主総会の普通決議の定足数を排除するとは、別に議決権を行使することができる株主の過半数の出席がなくても、普通決議を行えるということです。
大会社であれば、株主が多いため、定款で定足数を排除する意味はあります。
しかし、中小零細企業で定足数を排除してしまうと、少数株主で普通決議が行われるリスクが高まります。
会社設立時の事情と会社の成長を考慮し、普通決議の定足数を排除するか決めるべきです。
取締役や監査役の選任や解任の株主総会決議について
第341条
第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
※役員とは取締役、会計参与、監査役のことをいいます(会社法第329条第1項)
取締役等の役員の選任については、株主総会の普通決議で行われます。
ただし、定款で普通決議について定足数を排除する規定を設けたとしても、役員の選任については、3分の1以上の出席がなければ、決議をすることができません。
(「特別普通決議」と言われます。)
たまに定款で、普通決議については会社法の条文通りに記載してあるのに、役員の選任の決議については定足数を3分の1以上としているものを見かけます。
これだと単なる普通決議のほうが要件が厳しくなり、矛盾してしまうので注意です。
と書いていたところ、あるところで、似たような質問がでて、私の考えとは違った意見が出ました。
どういうことかというと、通常の普通決議で「定款に別段の定めがある場合を除き」と記載してあれば、取締役の選任につき、定足数が3分の1と通常の普通決議より定足数が緩和されても問題ないという考えです。
商業登記の著名の司法書士の先生はそれで問題ないと言っているようですが、本来通常の普通決議より、取締役の決議のほうが定足数を緩和させていいのか、私は疑問に感じます。
定款でいいと言っているからしょうがないと思いますが・・・
さらに注意していただきたいのは、役員の選任だけでなく、解任も特別普通決議で決議できてしまうこと。
なので、中小零細企業の特別普通決議で定足数を最低限までの数を定款で定めると、役員の解任の際、思わぬ問題を引き起こすことになります。
旧商法では、役員の解任は株主総会の特別決議でしたが、会社法では普通決議になっているので注意が必要です。
会社によっては設立時に解任決議については定款で特別決議並の定足数、議決権要件を定めるなどのケアが必要です。
まとめ
普通決議でも、会社の規模に合わせて定足数をどうするのかが非常に大事。
特に中小零細企業は株主間が顔見知りのことが多いので、定足数の排除が思わぬ問題を引き起こすこともあります。
ただ単にモデル定款のみを使うのではなく会社の実情を元に、雛形を変えていくことも大事です。
今回は
『株式会社設立時の定款 普通決議の定足数に注意!』
に関する内容でした。
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平成27・28年施行 改正会社法・商業登記規則 役員変更登記の注意点
参考書籍
「会社法」法令集<第十一版>
中央経済社 中央経済社 2015-03-25
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中小企業のための戦略的定款―作成理論と実務
司法書士グループLLP経営360° 民事法研究会 2008-06
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