土地評価の基礎:相続税と贈与税で知っておくべきこと

はじめに 相続税や贈与税の評価はどのようにするのか?

こんにちは、東京都江戸川区船堀に事務所を構える司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。

これまでに相続税・贈与税の概略についていろいろと紹介してきました。

まだチェックしていない方は、ぜひ過去のブログをご覧ください。

今回は、財産の評価の原則と土地の評価方法について詳しく説明します。

詳しくは「みんなが欲しかった! FPの教科書 2級」を参考にしてください。

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相続税や贈与税の評価はどのようにするのか?

相続税や贈与税を計算する際、財産の価格は原則として時価(その財産を取得したときの価格)で評価されます。

特に土地の評価は、一画地(利用単位)ごとに異なり、評価方法としては「倍率方式」「路線価方式」が主に用いられます。

倍率方式と路線価方式の概要

倍率方式の概要

倍率方式は、主に郊外地や農村部で使われる方法です。

固定資産税の評価額に特定の倍率を乗じて計算し、市街地とは異なる地価の実情に合わせた評価が可能です。

路線価方式の概要

一方、路線価方式は市街地にある宅地の評価方法です。

宅地が接する道路ごとに設定された1㎡あたりの価格(路線価)を基に宅地の評価額を算出します。

この方法では、宅地が接する道路ごとに設定された1㎡あたりの価格(路線価)を基に宅地の評価額を算出します。

路線価方式の計算の具体例

計算方法は以下のとおりです。

・一方のみが道路に面している宅地

評価額=路線価×奥行価格補正率×地積

事例: 市街地にある100㎡の宅地が一方の道路に面しています。この地域の路線価が100万円/㎡、奥行価格補正率が0.8

計算: 評価額 = 100万円/㎡×0.8×100㎡ = 80,000,000円

・正面と側面が道路に面している土地

評価額={(正面路線価×奥行価格補正率)+(側方路線価格×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積

なお正面の判定については、路線価×奥行価格補正率で計算して、いずれか高いほうが「正面」となります。

事例: 同じ市街地にあり、地積が100㎡の土地です。A面(正面)の路線価が150万円/㎡、B面(側面)の路線価が100万円/㎡、奥行価格補正率が0.9です.

A面の調整価格 = 150万円/㎡ × 0.9 = 135万円/㎡
B面の調整価格 = 100万円/㎡ × 0.9 = 90万円/㎡

正面はA面となります(A面 > B面)。

評価額 = {(150万円/㎡ × 0.9)+(100万円/㎡ × 0.9 × 0.1)} × 100㎡ = 135,900,000円

・正面と裏面が道路に面している宅地

評価額={(正面路線価×奥行価格補正率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)}×地積

正面の判断は路線価の高いほうが「正面」となります。

事例: 市街地の土地で、地積が100㎡、A面の路線価が200万円/㎡、B面の路線価が150万円/㎡、奥行価格補正率が0.85、二方路線影響加算率が0.2

正面はA面となります(A面の路線価がB面より高いため)。

評価額 = {(200万円/㎡ × 0.85)+(150万円/㎡ × 0.85 × 0.2)} × 100㎡ = 187,000,000円

宅地の分類と評価

宅地は「自用地」「借地権」「貸宅地」「貸家建付地」に分類して評価します。

「自用地」とは、土地の所有者が自分のために使用している宅地のことをいいます。

評価額=評価額方式または倍率方式で計算した評価額

「借地権」とは、借地権が設定されている場合の宅地の賃借権をいいます。

例えばAさんの土地をBさんが借りている場合のBさんの権利を「借地権」といいます。

評価額=自用地評価額×借地権割合

※借地権割合は路線価の隣のアルファベットの記号をいい、借地権割合に応じて90%(A)から30%(G)まであります。

「貸宅地」とは、借地権が設定されている宅地をいいます。

例えばAさんの土地をBさんが借りている場合のAさんの土地を「貸宅地」といいます。

評価額=自用地評価額-(1-借地権割合)

貸家建付地」とは、自分の土地にアパートをなどを建てて他人に貸している場合の宅地をいいます。

例えばAさんの土地にAさんのアパートを建てて、Cさんがアパートを借りて住んでいるような場合です。

評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

土地の使用貸借の場合(土地を無償で貸した場合)の土地の相続税評価額は、自用地として評価額となります。

たとえば、父の土地を無償で子が借り、その上に子が家屋を建てたという場合は貸主(父)の土地の評価額は自用地としての価格となります。

一方で借主(子)の土地の評価額は0となります。

「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」については改めて紹介します。

まとめ

今回は財産の評価と土地の評価について概略を紹介しました。

自分の地域の路線価がどの程度なのかは非常に重要ですので、国税庁のウェブサイトで「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」を参照することをお勧めします。

詳細は以下のリンクからアクセスできます。

財産評価基準書路線価図・評価倍率表」(国税庁のHP)

今回は
『土地評価の基礎:相続税と贈与税で知っておくべきこと』
に関する内容でした。

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。