株主総会 中小零細企業でも完全オンライン化はできるのか?
東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
株主総会に関しては、現状だと、大企業の場合、どこに会場を借りて開催することがほとんどです。
しかし、新型コロナウィルス感染予防の観点で、オンラインでできないかが問題となっています。
今回は株主総会完全オンライン化について書きます。
正直私見が多くなることをご承知おきください。
株主総会 中小零細企業でも完全オンライン化はできるのか?
現状の会社法ではオンライン開催はできない
会社法には根拠条文はありませんが、解釈上、株主総会を開催するには会場を設ける必要があるとされています。
なので、ハイブリット形式(会場を設けてオンラインで併用して開催する)で行わざるを得ず、これはどの規模の会社でも同じ扱いとなります。
今後上場企業では一定の要件で株主総会の完全オンライン化が可能に
会社法改正は先日行われたばかりで、株主総会を完全オンライン化するための法整備をするには時間がかかります。
しかし、産業競争力強化法等の一部改正により、株主総会を完全オンライン化できるようになります。
ただし要件として基本上場会社を想定した規定であり、しかも定款に場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定めが原則必要となります。
株主総会議事録にも完全オンライン化に関する事項(株主総会を場所の定めのない株主総会とした旨及びその議事における情報の送受信に用いた通信の方法など)を記載する必要があり、原則定款の添付も必要となります。
そのため、大企業では、以下のような定款変更決議を行うところがあります。
以下はZホールディングス株式会社の定款変更案です。
(招集)
第○条 1項省略
2 当会社の株主総会は、場所の定めのない株主総会とすることができる。附則
(株主総会の招集に関する経過措置)
第○条 第○条(招集)の変更は、国会における産業競争力強化法等の一部を改正する法律の成立および施行後、経済産業省令・法務省令で定めるところにより、当社が実施する完全電子化による株主総会が、経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた日を効力発生日として、本附則は、効力発生日以後、これを削除するものとする。(Zホールディングスの招集通知より)
中小零細企業は株主総会を完全オンライン化でできるのか?
場所の定めのない株主総会を開催することができる旨の定款の定めは上場会社しかできず、中小零細企業はできない扱いとなります。
定款を添付することと、上場会社の要件は登記簿を見ればわかるため、おそらく中小零細企業が完全オンライン化で株主総会を開催して上場企業と同じような議事録を作成して登記申請しても受理はされません。
となると、本来であれば、株主総会の完全オンライン化は中小零細企業でも採用できれば、メリットはありそうですが、現状はそうはいかないということになります。
なので、中小零細企業の場合、定款で「当会社の株主総会は、場所のない株主総会とすることができる」と定めても、無効もしくは意味のない規定に現状はならざるを得ないと思われます。
なお、中小零細企業が似たようなことをする場合は、会社法第319条・320条のみなし総会による方法が適しているように感じます。
まとめ
株主総会の完全オンライン化については、まずは一定の要件を満たす上場会社しかできないとのこと。
なので、会社法の改正がない限りは中小零細企業では株主総会の完全オンライン化は難しいと思われます。
株主総会の完全オンライン化については株主の権利の問題も出てくるので一筋縄にはいかない気がしています。
このあたりは同業の方のご意見を聞きたいと思っています。
今回は
『株主総会 中小零細企業でも完全オンライン化はできるのか?』
に関する内容でした。
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