株式会社と取締役会の決議の省略 注意しなければならないことは?
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
ある方から質問をいただきました。
取締役会設置会社です。
コロナウイルスの影響で取締役が全員集まれないので、会社法第370条の取締役の決議の省略を用いてやろうと思っています。
ただし、定款に取締役会決議省略の記載はありません。
その場合でも、取締役会の決議の省略は使えますか?
このご時世で、取締役が一同に会する機会が難しい場合、「取締役会の決議の省略」を用いる会社も増えるでしょう。
その場合に気をつけないといけないことは何でしょうか。
もしかしたら司法書士試験でも問われる内容です。
株式会社と取締役会の決議の省略 注意しなければならないことは?
取締役会の決議の省略の要件は?
取締役会の決議の省略については、会社法第370条に条文があります。
第370条
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
要件としては、取締役会の決議の省略については、定款に定めがあることが必要です。
株主総会の決議の省略については、定款で定める必要がありませんが(任意的に定めている会社も多いです)、取締役会の決議の省略は、定款の定めがないと行うことができません。
取締役相互の監督を前提とした機関が取締役会なので、決議の省略を認めてしまうことは、取締役会制度の枠組みに重大な影響を及ぼすため、定款で認めた場合のみしか認めないのが解釈です。(商業・法人登記360問 253ページ)
定款に取締役会決議の省略がない場合の対処法
定款に取締役会決議の省略がない場合、他に取締役会の開催方法はないのでしょうか。
取締役会では、テレビ・電話会議方式による取締役会の開催は可能です。
要件としては、「一同に会するのと同等の相互に十分な議論が行う場合には可能である」場合にできます。
なので、Zoomなどがあればできるものと解されます。
文明の利器を上手に活用すれば、上記の要件を満たすことは可能だと考えます。
テレビ・電話会議方式の場合、議事録には出席取締役のうち、テレビ・電話会議方式で参加したものがいた場合はその旨を出席状況に書きます。
さらに会議に出席した取締役は署名若しくは記名押印が必要になります。
やむを得ない事情により署名ができない取締役がいる場合に
- その他の出席取締役の過半数の署名があるとき
- やむを得ない事情により署名ができないことを証する書面が添付されているとき
は、有効な取締役会議事録として扱うことができます。
海外に取締役がいる場合には重宝しますし、登記申請にも使える方法です。
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取締役決議の省略で登記事項に絡む場合の添付書面は?
さて、取締役会の決議の省略に話題を戻します。
取締役会決議の省略の場合は、決議の省略があったものとみなされた事項の内容を記載した議事録を作成することになります。
提案書や同意書は不要になります。
このあたりは株主総会の決議の省略と同じですね。
当該議事録に押印する印鑑については、取締役全員が押印する必要はないとされています。
注意なのは、代表取締役の選定を取締役会決議省略の方法で行う場合には、議事録に出席取締役の実印押印と印鑑証明書の添付が必要と解されています。
ただし、議事録に会社届出印を押印できる者がいる場合には、他の取締役は実印押印は不要ですが、認印の押印は必要です。
もし、当該議事録に取締役等の印鑑が押印されていない場合、決議省略に関する同意書に各取締役が実印押印し印鑑証明書を添付すれば登記申請は受理されると解されています。
あと、定款に取締役会決議省略の条項があることが要件となるので、定款添付が必要となります。
まとめ
今回は、ある方からの質問をもとにブログを書きました。
中小零細企業の皆様へ。
会社法に関する質問を随時受け付けております。
個別具体的な質問は難しい場合もありますが、対応いたします。
特に会社設立に関してご質問があれば、個別的もしくはブログでお答えします。
今回は
『取締役会の決議の省略 注意しなければならないことは?』
に関する内容でした。
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