令和元年12月11日公布の会社法改正 ひとり会社で影響はあるのか?
東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
令和元年12月11日に会社法の一部改正が公布されました。
このブログでも実務の影響のことについては触れています。
改めて、改正点の概略(細かいことは今回は書いていません)、施行日はいつになるのか、ひとり会社では影響があるのかを含めて紹介します。
法務省のこちらのページも参考にしてください。
「会社法の一部を改正する法律について」(法務省ホームページより)
令和元年12月11日公布の会社法改正 ひとり株式会社で影響はあるのか?
ひとり会社の法人形態には改正会社法の影響はあるのか?
結論から書くと、ひとり会社の法人では取締役の欠格事由に関する部分は影響がありますが、支店を設けていない限りは影響はほとんどありません。
今回の会社法改正は、主に大会社向けで、大企業に対するコーポレート・ガバナンスの向上と日本企業の信頼性を高めるところに主眼をおいているからです。
とはいっても、株主総会の運営や取締役の職務の執行の一層の適正化をはかるとも会社法改正の資料には上がっていることから、中小零細企業でも、法務は今後意識していかないといけないところなのかとも感じています。
そのために中小零細企業の経営者も、今回の会社法改正で何が変わるのかは目にしたほうがいいです。
株主総会に関する規律の見直し
株主総会については、以下の内容が創設・整備されます。
- 株主総会資料の電子提供制度の創設
- 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
上記事項に関連して、改正には直接関係ありませんが、中小零細企業の株主総会の招集手続について触れておきます。
中小零細企業でも株主総会の招集通知は会社法もしくは定款の定めた期間内にする必要があります。
ただし、非取締役会設置会社の非公開会社では、書面投票・電子投票を採用しない場合、書面で招集通知を送付する必要がありません。
なので、上記の会社で株主が数名いる場合は、メールや口頭で招集通知を発すればいいことになります。
(株主総会の招集の通知)
第299条
1 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 株式会社が取締役会設置会社である場合
3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
また、総株主の同意があれば、原則招集通知をせずに株主総会を開催することは可能です。
今後は、非公開会社の非取締役会設置会社でも株主総会は重要視されるため、株主総会の招集手続は押さえておくべきです。
株主が少なければ、319条のみなし総会の制度も活用されることをおすすめします。
取締役等に関する規律の見直し
取締役に関する改正点は、以下のとおりです。
- 取締役の報酬に関する規律の見直し
- 会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備
- 社外取締役の活用等
ここではひとり会社については、影響を及ぼすことは皆無と言えます。
ただ、取締役の報酬については、株主総会の決議で決めなければならない点は知っておいてください。
(勝手に役員報酬を株主総会の決議なしに変えることはできません)
その他の改正
上記以外の改正点については以下のとおりです。
- 社債の管理に関する規律の見直し
- 株式交付制度の創設
他にもありますが、唯一ひとり会社でも影響がでるとしたら以下の改正になるでしょう。
- 会社の支店の所在地における登記の廃止(ひとり会社が支店の登記をする例はほとんどありませんが)
- 成年被後見人・被保佐人についての取締役等の欠格条項を削除
今まで、取締役は成年被後見人や被保佐人はなれなかったのが、被後見人や被保佐人でも取締役になれるようになります。
つまり、ひとり会社の取締役が被後見人になった場合、会社はデットロック状態になり機能しなくなるリスクがありました。
これが一応デットロック状態は解消されることを意味し、ここは大きな改正です。
上記以外にも、もしかしたら中小零細企業でも考えられなくはないものとして、株主が議決権行使書面等の閲覧等を請求する場合においては、当該請求理由を明らかにしなければならず、また株式会社が、当該請求を拒むことができる場合ついて、一定の拒絶理由を明文化することとなっています。
(ひとり会社だと関係ないですが)
まとめ(施行期日はいつか?)
株主総会資料の電子提供制度の創設及び会社の支店所在地廃止については令和4年中に施行予定となっています。
それ以外については令和3年3月1日から施行される予定となっています。
今後もひとり会社を含めた中小零細企業の改正については随時ブログで紹介していきます。
今回は
『令和元年12月11日公布の会社法改正 ひとり会社で影響はあるのか?』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
ひとり会社に関するブログはこちらを御覧ください。
参考書籍
一問一答 令和元年改正会社法 | ||||
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企業法務はここを押さえる!令和元年会社法改正ガイドブック | ||||
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