東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
前回のひとり会社の取締役の追加で任期はどうなるのかを書きました。
ビジネスパートナーで絶対にうまくいく人を選んでいるつもりが意見の相違がでてしまった。
円満にビジネスパートナーを解消できればいいが、相手がなかなか辞任をしてくれず取締役として居残っているときが問題になります。
解任することも可能ですが、実際にはすんなりいかない問題があります。
ひとり会社で取締役を増やしたのはいいが・・・ビジネスパートナーを解消する際の問題点は?
ビジネスパートナーをしっくり解消する方法は?
一番いいのは当事者でお話していただき、一方が取締役の辞任届を出してもらうのが最善です。
そのためにも、新しい取締役の入社前からきちんと信頼関係を構築しておくこと、取締役になった後も意見交換をするなど、お互いより良い方向に会社を持っていくことが大事。
そういう会社にあって、意見の相違等で方向性が違ったときもすんなり相手も辞任することを了承してくれるのではないでしょうか。
あと、取締役就任前にも委任契約をきちんと交わすなどの予防法務的側面もしておくのも重要です。
方向性の相違でうまくいかなかった時 「解任」でいいのか?
ひとり株式会社で、取締役を選任した際の株主は自分だけの場合、相手が辞任届も提出してもらえず居座る場合もありえます。
オーナーであるあなたとして考えられることは株主総会でその取締役を「解任」する決議を行うことです。
「解任」決議が成立すれば、取締役は自動的に会社をでなければなりません。
ただ、「解任」については様々な観点から問題があります。
まずは正当な理由でもそうでなくても登記簿に退任原因が「解任」となるので、この会社何かトラブルがあったのかが第三者から分かってしまうのが難点。
さらに正当な理由でない「解任」の場合には、残存任期に関する損害賠償を解任されられた取締役から会社に対して請求してくる可能性があります。
正当な理由かどうかは個々の理由により判断されるので、裁判沙汰になることは間違いなく、会社経営で疲弊することも予想されます。
そこで、「解任」を避けるため、任期をあえて短縮されて任期が切れたことにし、退任させて再任させないことも方法としてはあります。
甲さんが定款で任期を10年で定め、平成25年に一人株式会社を設立しました。
その後3年を経過した日、ビジネスパートナーとして乙さんを招聘し、乙さんを新たに取締役として選任しました。
ところが、甲さんと乙さんとの経営方針がずれ始め、やがて顔を見たくなくなる間柄になりました。
乙さんも辞任届を出さず居座ったため、「解任」を避けるため、平成30年の株主総会で任期4年とする定款変更をしました。
そうすると、任期が短縮されるため、甲さん・乙さん双方任期満了で退任することになります。
そして、新たに甲さんのみを取締役に選任し、乙さんは選任しませんでした。
乙さんは解任されたと同じで、解任に付き正当な理由がないものとして、会社に対し、解任で生じた賠償を請求することにしました。
この場合、乙さんとしては納得いかない、解任と同じ扱いではないのかと思うでしょう。
実は、最近の裁判例で、上記のやり方が「解任」と同じような考えに立つと判示されました。
なので、上記やり方でも、定款で任期短縮する行為が解任と同じよう扱われる可能性があり、正当な理由がない場合は損害賠償を請求してくる可能性があります。
結局は、経営の方向性が違って退任させたい場合は様々なトラブルを生じることを頭に入れないと経営者はいけないということになります。
損害については、はっきりした判例がでていませんが、多数説は、残存任期の報酬全額が損害の対象になると解されています。
まとめ
新たな取締役を入れて経営規模を拡大したい場合、きちんと会社の理念を共有できる人をビジネスパートナーとして選ぶ必要があります。
また、新しい取締役を選任した場合は、一度任期を見直すなど対策を講じることも大事になります。
今回は
『ひとり会社で取締役を増やしたのはいいが・・・ビジネスパートナーを解消する際の問題点は?』
に関する内容でした。
お知らせ
下記内容のDVD・CDが発売されました。
企業法務に携わる先生方にオススメです!
(9月の最新ベストランキング第2位に
なりました!)
平成27・28年施行 改正会社法・商業登記規則 役員変更登記の注意点
参考書籍はこちら
株式会社法 第7版
江頭 憲治郎 有斐閣 2017-11-11
|