東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
会社設立の登記の簡素化が議論されています。
そんな中朝日新聞が平成30年4月30日付けで
『会社設立10日→1日」で可能に 簡素化で起業促す』
という見出しで、会社設立の簡素化を記事にしていました。
私は残念ながら会社設立が1日でできても、それだけでは起業の活性化にはつながらないと考えています。
そもそも今の日本には起業するだけの力がない
小中学生「将来の職業人気ランキング」を見れば、日本の起業が促進されない理由がわかリます。
スポーツ選手が上位を占める中、男子の将来就きたい仕事で5位にサラリーマン、9位に公務員がランキング。
しかも中学生のランキングに至っては公務員が第1位だという有様。
(人材サービスのアデコが「2018年版小中学生の将来就きたい仕事」に関する調査結果より)
安定志向の仕事を小中学生が好んでいる現状で起業の土壌が促進されるといえるでしょうか。
今の教育が続くもとでは、今後も起業に対する土壌はできないと思います。
小中学生のときから、単なる詰め込み教育だけでなく、お金の流れなり社会の仕組みをもっと勉強させる必要があると思います。
そもそも会社設立自体1日で出来ない
現在、会社設立登記は、法務局に登記申請して3執務日以内にでき、着実に「ファストトラック化」が進んでいます。
あと、ある程度設立書類の準備ができていれば、1日で設立登記の申請まではもっていけます。
設立登記ができるまでに日数がかかるということです。
実は新聞記事が「1日で会社設立」とタイトルをつけているのは、法務局に設立登記を申請してから24時間以内で完了させるという意味。
なので、会社設立そのものが1日でできることはありえません。
そもそも会社設立の準備段階で定款の内容等を吟味する必要があるからです。
定款は会社の根本規則を定めるもの、また会社設立後の戦略ツールになりうるものなのです。
例えば、役員構成をどうするか、種類株式を発行するとか、定款の検討事項は多いです。
定款の中身が決まれば、会社設立まではスムーズにいけるだけのことです。
なので、会社設立が1日でできるなんて勘違いしないでください。
会社設立は準備期間も含めたら数日、場合によっては1ヶ月かけてもいいくらいです。
1日で会社設立までやろうとする場合は、よほど事業計画など綿密にしていることが最低条件になるでしょう。
10年経過して、生き残っている会社はほとんどない現状を考えると、私は会社設立前段階からしっかり事業計画を立てることが大事だと考えています。
会社設立だけでなく中小企業の環境を整えることが起業を促す第一歩
政府が経済界の要請に応えて今回の会社設立の簡素化を図っていると思いますが、もっと現実を見てほしい。
廃業したり事業を停止したりする企業が半分近くに上るという事実を。
起業促進を謳っているのであれば、政府は会社設立の前段階だけでなく、設立後のアフターケアも考慮しないといけません。
最近は折角起業しても、跡継ぎ問題、いわゆる事業承継も社会問題になっています。
技術を継ぐ人がいなくなり、日本経済に大きな損失を与えているのです。
繰り返しになりますが、私は起業促進というのは、ただ会社設立を促すだけでなく、事業全体の流れをもっと俯瞰してやらなければならないと思っています。
日本経済を支えているのは、わずか数%の大企業ではなく、大多数が占める中小企業なのだから・・・
まとめ
会社設立が1日でできることは起業家には喜ばしいことと思いますが、それだけでは起業促進には繋がりません。
もっと中小企業を取り巻く環境から起業促進をどうすればいいか考えるべきです。
今回は
『会社設立が1日でできても起業を促すことはできない』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
会社設立のファストトラック化についてはこちらのブログを御覧ください。
参考書籍
司法書士&行政書士に読んでほしい会社設立時の税務の話
山下雄次/永渕圭一 日本法令 2016年03月14日
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