東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
「役員変更はややこしい」シリーズ。
今回は役員の任期の数え方について書きます。
気をつけないと、既に任期が満了していて選任懈怠状態になるので・・・
商業登記 役員の任期を数え間違えないように・・・
取締役の任期の原則は?
今回は取締役会非設置会社の役員(取締役)の任期について触れます。
まず、原則から。
取締役の任期は、原則2年です。
ただし、全ての株式について譲渡制限を設けている会社(非公開会社)については、定款で最長10年まで新調できます。
正式には、
「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会集結の時」
までが任期となります。
なので、自分の会社の任期はいつまでかは、定款で確認するようにしてください。
登記事項証明書には、事業年度や任期は記載されていません。
取締役の任期を数え間違えないように注意する
以下の会社を例に考えてみましょう。
事業年度を4月1日から3月31日までの株式会社(取締役のみの会社)
定款には以下の記載がある。
- 任期は選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
- 補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任取締役又は他の在任取締役の任期の満了すべき時までとする。
会社設立は2018年4月10日
まず、この会社の設立時の取締役の任期が問題になります。
この会社の取締役の任期は、2028年の定時株主総会終結の時までとなります。
定時株主総会は、事業年度終了後3ヶ月以内に行うのが会社法の定めですが、法人の確定申告は、事業年度終了後2ヶ月以内にするのが原則です。
なので、上記の会社だと、取締役の任期は最も長くて2028年5月31日となります。
さて、ここからが問題事案
取締役を新たに2018年9月に選任した場合
増員取締役として選ばれた場合、既にいる取締役の任期に引っ張られます。
よって、任期満了時は2028年3月決算に関する定時株主総会の時までとなります。
2020年に決算期を3月から9月に定款変更した場合
この場合、2028年9月決算に関する定時株主総会終結まで任期が伸びるのか、それとも2027年9月決算に関する定時株主総会で任期が終わるのかが問題になります。
結論は、2037年9月決算に関する定時株主総会終結の時までとなるので、最長で、2027年11月30日までとなります。
会社の事業年度は原則1年であり、短くした場合事業年度も短くなります。(例外もあります)
事業年度を短くすると取締役の任期もそれに引っ張られ短縮されます。
本例だと、3期目は2020年4月1日から9月30日までとなり、10月1日から4期目となります。
それに伴い、期日を数えると2027年9月30日で10期目が終わることになるため、そこが選任後10年以内に終了する事業年度となるのです。
ここは数え間違いやすいところなので注意が必要です。
2025年の定時株主総会で任期を5年する変更をした場合
この場合は、既に選任してから5年が経過することになるため、選ばれていた取締役は全員任期満了により退任します。
そして、新たに取締役を選任する決議を定時株主総会で行う必要があります。
かりに2025年までに増員や欠員で取締役になっていた人がいても、定款の規定により、全員任期が切れますので注意が必要です。
任期満了しているにもかかわらず怠ってしまった場合
任期が切れているにもかかわらず取締役の選任をし忘れた場合、選任懈怠ということで会社法違反となります。
さらに登記が漏れているということで登記懈怠ということにもなります。
登記懈怠となると、過料に課され罰金を払うことになりますので、任期の管理には十分注意が必要です。
特に事業年度の変更や任期を変える定款変更決議をした場合は要注意です。
まとめ
取締役の任期については定款でよく確認すること、そして選任されたのはいつか、また事業年度はいつまでかも確認するようにしてください。
任期途中で役員の任期を変更した場合は、定款そのものを書き直すことも忘れないようにしてください。
今回は
『商業登記 役員の任期を数え間違えないように・・・』
に関する内容でした。
参考書籍
商業登記ハンドブック〔第3版〕
松井 信憲 商事法務 2015-05-20
|