役員変更登記「選任懈怠」「登記懈怠」何が違うの?

東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。

はじめに

取締役等の任期が満了しているにもかからわず、役員変更登記をしていない株式会社がかなりあります。

任期満了に気づいていないのか、そもそも総会を開催していないのか、いろいろ問題があります。

よく「選任懈怠」「登記懈怠」とか言われますが、違いは何かあるのでしょうか。

「選任懈怠」「登記懈怠」何か違いはあるのでしょうか?

「選任懈怠」の意味は?

選任懈怠とは、そもそも定時株主総会を開催してない場合、もしくは役員変更決議をしなければならないにもかかわらず、決議していないことをいいます。

休眠会社状態にある場合や、法律もしくは定款の員数を欠いている場合が選任懈怠に当たります。

「登記懈怠」の意味は?

登記懈怠とは、選任決議をしていたが、登記を失念していた場合を指します。

こちらは実体上役員変更の手続きをしてはいますが、2週間以内に登記をしなければならないのにやっていないことを指します。

「選任懈怠」「登記懈怠」で手続が異なるのか?

「選任懈怠」の場合、全く役員変更決議をしていないのですから、同じ人が再任された場合、「年月日退任」「年月日就任」となり。退任日と就任日の日付が空白期間になります。

空白期間は就任登記が新たに発生するまで取締役の権利義務を負います

一方「登記懈怠」の場合は、登記を失念しなかっただけなので、定時株主総会開催時を持って「年月日重任」と登記できます。
ただ、登記懈怠の場合、任期満了ごとに登記を忘れていた場合、任期が切れたごとに「年月日重任」登記をする必要があります

具体的に見ていきましょう。

取締役の任期が定款で「選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結のときまでとする」とする会社。

定款で「定時株主総会は事業年度終了後3カ月以内に行う」と記載されています。

最後に取締役の登記がされていたのは
「平成24年5月30日就任」
と登記簿に記録されています。

この会社で、
①全く定時株主総会を行わず、平成30年5月30日に役員選任決議を行った場合(選任懈怠)
②毎年5月30日に定時株主総会を開催していた場合
とで登記申請に違いは出てくるのでしょうか。

ちなみに登記申請日は平成30年6月29日とします。

①の場合だと、登記すべき事項は
「平成26年6月30日退任」
「平成30年5月30日就任」
となります。

②の場合だと
「平成26年5月30日重任」
「平成28年5月30日重任」
「平成30年5月30日重任」
となります。

①の場合だと、登記簿上約4年間役員として就任していないとみられ、②の場合はずっと同じ人が役員をしていたと登記簿からは見ることができます。

「選任懈怠」と「登記懈怠」で問題になることは?

「選任懈怠」と「登記懈怠」で特に神経を尖らせないといけないのは、建設業の許可を受けている会社です。

経理や施行など業務面で特殊性が高い建設業にあっては、適正な経営を図るため、その知識経験を十分に有する人を「経営管理の責任者」として、会社にあらかじめ配置する必要があります。

「経営管理の責任者」の要件は、法人の役員としての経験が5年以上のほか、建設業法所定の要件を満たす必要があります。

それを確認するため「経営業務の管理責任者に係る経験確認書類」として、「その建設会社の役員(監査役や合資会社の有限責任社員は含まない)として5年以上就任していたこと」が確認できる登記事項証明書または登記簿謄本を添付することが必要です。

そのため、建設業の許可を受けている会社において、上記①の例だと、「平成26年6月30日退任」「平成30年5月30日就任」と「選任懈怠」により登記の申請をし、その旨が登記簿に記録されてしまうと問題が起こります。

本来「経営管理の責任者」の要件を満たす場合であっても、当該期間、登記簿上「その建設会社の役員として5年間就任していたこと」ということが証明できないという不都合が生じるようです。

そのため、空白期間に取締役であったことを証するため、他の書類が必要となるようですが、建設業の許認可を受けている会社の役員変更は十分注意してください。

ただ、多くの中小零細企業の場合、定時株主総会を開かないことのほうが多く、「登記懈怠」よりも「選任懈怠」のほうが多い気がします。

「選任懈怠」「登記懈怠」いずれにしても、登記申請から2週間以上遅れていることから過料の対象になることは十分注意してください。

まとめ(選任懈怠・登記懈怠を防ぐためには?)

選任懈怠・登記懈怠を防ぐには、株式会社の場合、定時株主総会は必ず開催してください
中小零細企業でも必須です。

そして役員の任期を絶えず定款で確認する、それで「選任懈怠」「登記懈怠」を防ぐことができます。

任期の管理は司法書士でも行うこともできるので、ぜひ活用してください。

今回は
『役員変更登記「選任懈怠」「登記懈怠」何が違うの?』
に関する内容でした。

あわせて読みたい

あなたの会社、きちんと役員の任期を把握していますか?こちらのブログも合わせて御覧ください。

参考書籍

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この記事を書いた人

司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。

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