こんにちは、東京都江戸川区船堀に事務所を構える「相続」に特化した事務所、司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirijunshoshi)です。
目次
はじめに プロローグ――ある町工場の週明け
月曜の朝、江戸川区のとある町工場「サクラ精機」には緊張が走りました。
創業社長の佐藤さん(68)が週末に倒れ、意識が戻らないという知らせが入ったのです。
工場長が銀行へ連絡すると、代表者の状況が不明なため口座は凍結。
仕入代金の振込も、従業員の給与も、一切動かせなくなりました。
取引先は「支払い確認が取れない」と出荷を停止。
たった1日で、四半世紀守ってきた製造ラインが止まりかけました。
今回は上記の会社のストーリー(会社の名前は架空です)をもとに「事業承継」について考えていきましょう。

1.口座凍結と契約停止――資金繰りは一瞬で詰まる
銀行は代表者死亡・重病の可能性があると、法的トラブルを避けるため残高を凍結します。
オンラインバンキングのIDが社長個人に紐づく場合、家族でも操作できません。
支払不能が続くと、仕入先は納品を止め、従業員は生活に不安を抱きます。
「売上はあるのに現金がない」という矛盾こそ、承継を放置した会社が最初に直面する壁です。
2.議決権の分散――会社は“誰のもの”か決められない
佐藤家には長女・次女・長男の三きょうだいがいましたが、工場を継ぐ意思はバラバラ。
もし社長が急逝すれば、相続により株式は3人に均等分割される可能性があります。
1株1議決権のままでは、誰が代表になるか決める株主総会が開けません。
結果、次に紹介する買い手が現れても「株主全員の同意」をそろえられず、好機を逃します。
3.人材流出――“将来が見えない会社”に明日はない
士気が下がった工場では、若手エースが「先が見えない」と転職を決意。
3か月後に辞表を出せば、熟練者が不足し、技術力で勝負してきた会社の強みが崩れます。
M&Aで第三者に譲渡しようとしても、技術者が抜けた会社は価値が半減。
事業承継の先送りは、会社の“中身”まで傷つけるのです。
4.“会社の見える化”が放置リスクを半減させる
(1) 財産・負債・契約の棚卸し
まずは不動産、機械、預金、借入、保証債務を一覧にして、誰が名義人か確認します。
司法書士は登記事項証明書を取得し、名義のズレや担保設定の有無を洗い出します。
(2) 株主名簿の整備
株主構成を確認し、議決権を将来どう集約するかプランを立てます。
遺言や家族信託を活用すれば、「経営に参加しない相続人へ現金を、後継者へ株式を集中」という設計が可能です。
(3) 後継者の育成スケジュール
五年計画で現場・財務・営業をローテーションさせ、社長の暗黙知を可視化します。
ポイントは「社長の背中を見て覚えろ」ではなく、「マニュアル+OJT」で再現性を高めることです。
5.司法書士ができる3つのこと
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名義確認と権利調査
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不動産・株式・知財などの名義を整理し、承継の障害を可視化。
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株式・議決権の集約支援
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贈与・信託・持株会社設立など、法的に安全な集約方法を設計。
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信託設計で“生前指揮”
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株式を信託し、社長が判断不能になっても後継者が経営できる仕組みを構築。
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エピローグ――動き出したサクラ精機
佐藤さんは幸い一命を取り留めましたが、医師から「経営復帰は困難」と宣告されました。
危機を目の当たりにした長女は「自分が代表を継ぐ」と決意し、私たち司法書士に相談。
株式を長女へ集中させる家族信託契約を結び、銀行には代表者変更登記を提出。
1か月後、凍結口座は解除され、工場は再び機械音を響かせました。
「もっと早く準備していれば…」という後悔を、あなたの会社で繰り返さないでください。
まとめ――今日から始める3ステップ
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会社の資産・負債・契約をリストアップする
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株主名簿を確認し、議決権の整理プランを考える
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専門家との無料相談を予約する
放置リスクを感じた今が行動の最大のチャンスです。
お気軽にご活用ください。
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