東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
先日、ある士業の団体で「相続土地国庫帰属制度の概要」と題してお話してきました。
講義当時で分かっている内容でざっくりとお話しました。
今回はブログ講義形式で「相続土地国庫帰属制度」の概要をお話します。
今回は3回目となります。
前々回と前回のブログはこのブログの下にリンクを貼っておきます。
相続土地国庫帰属制度の概要の内容
今回の講義の目次は以下の通りとなります。
・相続土地国庫帰属法の概要(前々回のブログ)
・申請ができる人(前々回のブログ)
・申請先(前回のブログ)
・帰属の承認ができない土地(前回のブログ)
・手数料(今回のブログ)
・負担金(今回のブログ)
・手続の流れ(今回のブログ)
以上に沿って書いていきます。
(ブログでは何回かに分けて書いていきます)
手数料はどうなるのか?
手数料については現段階では公表されておりません。
納付の方法については、承認申請書に収入印紙を貼り付けてする方法を取るようです。
(施行規則案第5条)
負担金はどうなるのか?
相続土地国庫帰属制度を利用するためには、申請人と帰属することのできる土地の要件の他、負担金を支払う必要があります。
負担金の考え方、
・帰属の承認を受けた土地がどのような種目に該当するか
・どのような区域に属しているか
以上をもとに負担金額が決定します。
政令で分類している種目や、面積に応じた算定が必要となる地域は次に紹介します。
土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金が必要です。
負担金(地目が宅地の場合)
面積に関わらず、20万円です。
ただし、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の宅地については、面積に応じ算定されます。
面積区分 |
負担金額 |
50㎡以下 |
国庫帰属地の面積に4,070(円/㎡)を乗じ、208,000円を加えた額 |
50㎡超100㎡以下 |
国庫帰属地の面積に2,720(円/㎡)を乗じ、276,000円を加えた額 |
100㎡超200㎡以下 |
国庫帰属地の面積に2,450(円/㎡)を乗じ、303,000円を加えた額 |
200㎡超400㎡以下 |
国庫帰属地の面積に2,250(円/㎡)を乗じ、343,000円を加えた額 |
400㎡超800㎡以下 |
国庫帰属地の面積に2,110(円/㎡)を乗じ、399,000円を加えた額 |
800㎡超 |
国庫帰属地の面積に2,010(円/㎡)を乗じ、479,000円を加えた額 |
負担金(地目が田・畑の場合)
面積に関わらず 20万円です。
ただし、以下の田、畑については、面積に応じ算定されます。
ア 都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地
イ 農業振興地域の整備に関する法律の農業地区域内の農地
ウ 土地改良事業等(土地改良事業又はそれに準ずる事業であって、農地法施行規則第40条第1号及び第2号イもしくはロに規定する事業)の施行区域内の農地
面積区分 |
負担金額 |
250㎡以下 |
国庫帰属地の面積に1,210(円/㎡)を乗じ、208,000円を加えた額 |
250㎡超500㎡以下 |
国庫帰属地の面積に850(円/㎡)を乗じ、298,000円を加えた額 |
500㎡超1,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に810(円/㎡)を乗じ、318,000円を加えた額 |
1,000㎡超2,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に740(円/㎡)を乗じ、388,000円を加えた額 |
2,000㎡超4,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に650(円/㎡)を乗じ、568,000円を加えた額 |
4,000㎡超 |
国庫帰属地の面積に640(円/㎡)を乗じ、608,000円を加えた額 |
負担金(地目が森林)
森林の場合は面積に応じて算定されます。
面積区分 |
負担金額 |
750㎡以下 |
国庫帰属地の面積に59(円/㎡)を乗じ、210,000円を加えた額 |
750㎡超1,500㎡以下 |
国庫帰属地の面積に24(円/㎡)を乗じ、237,000円を加えた額 |
1,500㎡超3,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に17(円/㎡)を乗じ、248,000円を加えた額 |
3,000㎡超6,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に12(円/㎡)を乗じ、263,000円を加えた額 |
6,000㎡超12,000㎡以下 |
国庫帰属地の面積に8(円/㎡)を乗じ、287,000円を加えた額 |
12,000㎡超 |
国庫帰属地の面積に6(円/㎡)を乗じ、311,000円を加えた額 |
負担金(地目がその他(雑種地・原野など))
面積に関わらず20万円です。
負担金計算の特例
承認申請者は法務大臣に対して、隣接する2筆以上の土地について、一つの土地とみなして、負担金の額を算定することを申し出ることができます(政令第5条)。
この特例の適用を受けた場合、隣接する2筆以上の土地を一筆分の負担金で国庫に帰属させることが可能となります。
例えば、市街化区域外の宅地で隣接する2筆の土地を申請する場合です。
100㎡の土地が2筆ある場合、1筆ごとに算定し、100㎡の土地が2筆で負担金の額が40万円となるのが原則です。
しかし特例を用いると、面積を合算することができ、100㎡の土地2つを合算できます。
なので、200㎡の土地1筆とみなされ、負担金が20万円となります。
手続の流れ
最後に手続の流れを紹介します。
1 承認申請
申請権者は、相続又は遺贈(相続人対する遺贈に限る)により土地を取得した者になります。
共有地の場合は共有者全員で申請する必要があります。
2 法務大臣(法務局)による要件審査・承認
実地調査権限があります。
・国有財産の管理担当部局等に調査への協力を求めることができます。
これは、運用において、国や地方公共団体に対して、承認申請があった旨を情報提供し、土地の寄附受けや地域での有効活用の機会を確保するためです。
3 申請者が10年分の土地管理費の負担金を納付
4 国庫帰属
国庫に帰属した土地は、普通財産として国が管理・処分されます。
管轄は以下のとおりです。
主に農用地として利用されている土地、主に森林として利用されている土地は農林水産大臣が管理・処分します。
それ以外の土地は財務大臣が管理・処分します。
まとめ
負担金が高いと、なかなか相続土地国庫帰属制度を利用する方は少ないように感じます。
一応負担金が公表されたので、令和5年4月からこの制度を利用したい人がどれだけいるか注目したいです。
なお、金曜日に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則案」につきパブリックコメントが出ましたので、次回はそのあたりでの情報を紹介します。
今回は
『ブログ講義 「相続土地国庫帰属制度の概要」を江戸川区の司法書士が解説(その3)』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
前々回と前回のブログとあわせて御覧ください。