東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
先日、ある士業の団体で「相続土地国庫帰属制度の概要」と題してお話してきました。
講義当時で分かっている内容でざっくりとお話しました。
今回はブログ講義形式で「相続土地国庫帰属制度」の概要をお話します。
今回は2回目となります。
相続土地国庫帰属制度の概要の内容
今回の講義の目次は以下の通りとなります。
・相続土地国庫帰属法の概要(前回のブログ)
・申請ができる人(前回のブログ)
・申請先(今回のブログ)
・帰属の承認ができない土地(今回のブログ)
・手数料
・負担金
・手続の流れ
以上に沿って書いていきます。
(ブログでは何回かに分けて書いていきます)
前回のブログは最後にリンクを貼っておきます。
申請先はどこになるのか?
申請先については、まだ、現状は公表されていません。
ただ、土地を国庫に帰属させるため、法務局が管轄することになろうかと思われます。
帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局を予定しています。
帰属の承認ができない土地について(概要)
帰属の承認ができない土地の要件については、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律で定められています。
この法律で定めていない土地は、国として利用する予定が全くない土地であっても、国庫帰属を承認しなければなりません。
ここが意外とキーポイントになります。
相続土地国庫帰属制度では、対象となる土地の地目について特段の制限は設けられていません。
農用地や森林であっても、法定の要件を満たしていれば、その所有権の国庫帰属は認められる扱いです。
土地は、相続によって取得した土地であれば、法律の施行前後を問わず制度の対象となります。
帰属の承認ができない土地(却下要件)
まずは、帰属の承認ができない土地の却下要件からみていきます。
その事由があれば直ちに通常の管理・処分をするに当たり過分の費用・労力を要すると扱われるものについては却下する必要があります。
承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができません。(帰属法2条3項 帰属政令2項)
(1)建物の存する土地
(2)担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
(3)通路その他の他人による使用が予定されている土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
(4)土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
(5)境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
これらのいずれかに該当する場合には、法務大臣は承認申請を却下しなければならないことに注意です。
なので、先日も私の依頼者から相談を受けたのですが、建物の存する土地を国庫に帰属させたいといっても(1)の却下事由にがいとうするため、国庫に帰属することはできないことになります。
東京23区や大都市圏の土地は(1)ないし(2)に当てはまることが多く、この制度が使えない気がしています。
帰属の承認ができない土地(不承認要件)
続いて、帰属承認ができない土地のうち、不承認証券の場合をみていきます。
費用・労力の過分性について個別の判断を要するものは不承認要件となります。
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければなりません。(帰属法5条1項、帰属政令3条)
(1)崖(勾配が30度以上であり、かつ高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
政令で定める崖の基準(勾配30度以上+高さ5メートル以上)に該当する崖がある土地であっても、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要しない場合には、国庫への帰属が承認されることもあります(法第5条第1項第1号)。
(2)土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
(3)除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
(4)隣接する土地の所有者等の争訟によらなければ通常の管理又は処分することができない土地(隣接所有者によって通行が現に妨害されている土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地)
問題は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地は、全て帰属ができないのでしょうか?
他の土地に囲まれて公道に通じない土地であっても、民法第210条第1項の規定による通行が妨げられていない場合(いわゆる囲繞地通行権の行使が妨げられていない場合)は、それだけを理由に帰属の承認ができない土地に該当するものではありません。
(5)通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
例えば以下の土地の場合は(5)に該当します。
・土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微な土地)
・鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命もしくは身体、の作物又は樹木に被害が生じ又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く)
このような土地の場合、動物による被害が「生ずるおそれがある」土地(政令第3条第3号第2号の承認ができない土地)とはどのようなものですか。ほとんど全ての森林などが帰属できなくなってしまうのではないかと疑問に思うかもしれません。
被害が「生ずるおそれ」とは、具体的な危険性があることをいい、抽象的な危険性があるにすぎないものは含まれません。
そのため、動物が生息していることのみをもって、被害が「生ずるおそれ」があるとは認められないことになります。
・適切な造林。間伐などが実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
・国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法の規定に基づき負担する土地
・国庫に帰属したことに伴い法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
(1)~(5)のいずれかに該当する場合には、法務大臣は不承認処分をします。
却下、不承認処分のいずれについても、行政府服審査・行政事件訴訟で不服申立てが可能です。
まとめ
今回は、相続土地国庫帰属制度の申請先と帰属できない土地についてのことを書きました。
土地の要件を見ていると、23区内でこの制度を利用するのは厳しいのではないかと感じています。
次回は負担料のことを中心に紹介していきます。
今回は
『ブログ講義 「相続土地国庫帰属制度の概要」を江戸川区の司法書士が解説(その2)』
に関する内容でした。
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