東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
先日、ある士業の団体で「相続土地国庫帰属制度の概要」と題してお話してきました。
講義当時で分かっている内容でざっくりとお話しました。
今回はブログ講義形式で「相続土地国庫帰属制度」の概要をお話します。
相続土地国庫帰属制度の概要の内容
今回の講義の目次は以下の通りとなります。
・相続土地国庫帰属法の概要(今回のブログで紹介)
・申請ができる人(今回のブログで紹介)
・申請先
・帰属の承認ができない土地
・手数料
・負担金
・手続の流れ
以上に沿って書いていきます。
(ブログでは何回かに分けて書いていきます)
相続土地国庫帰属制度ができた背景とは?
なぜ「相続土地国庫帰属法」ができたのかをまず知ることが大事です。
今回この法律ができた背景は、以下のとおりです。
(1)地方を中心に土地の所有意識の希薄化とともに土地の利用ニーズの低下により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える人が増加
(2)相続を起因として、土地を望まず取得した所有鞘の負担感の増加、管理の不全化を招いている
国でも土地に関する意識調査をしています。
土地問題に関する国民の意識調査(平成30年度版土地白書)によると、土地所有に対する負担感で負担に感じると思うが42%にのぼります。
地方の土地のみの相続で、あまり価値のない土地を承継しても固定資産税の負担だけが大きいのも影響しているかもしれません。
さらに、令和2年度法務省でも調査を行いました。
土地を所有する世帯のうち、土地を国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯は20%。
土地を国庫に帰属させてもいいという国民は一定数いることがわかります。
相続土地国庫帰属法の目的
最近の法律では、第1条に目的を掲げることが多いです。
相続土地国庫帰属法第1条では次のような条項になっています。
第1条(目的)
この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下、「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。
この目的の条項で大事な部分は、
・相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により「土地」の所有権又は共有持分を取得した者→申請できる人
・所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を画することができない土地)→土地の要件
という部分になります。
申請ができる人(概論)
申請ができる人の要件として押さえていただきたいのは、目的第1条に掲げられているとおり、相続又は相続人に対する遺贈によって所有権又は共有持分を取得した者になります。
売買やその他の特定の原因で不動産を取得した場合には申請ができません。
これは、あくまで自分の意思に基づかないで土地を取得した場合に対象となるからです。
自分の意思で取得した場合は、不動産の負担を承知の上取得しているので「相続土地国庫帰属制度」は適用されません。
単独で取得する場合と共有で取得する場合とで分けて説明します。
申請ができる人 単独所有の場合
単独所有で申請できる場合の1つ目としては、相続等により所有権の全部を取得した所有者です。
相続等により所有権の全部を取得した所有者が該当します。
ここで「相続等」に遺贈は含まれますが、あくまで相続人に対する遺贈のみが対象となるところに注意です。
遺贈は特定遺贈でも包括遺贈でも構いません。
2つ目の例としては相続等により所有権の一部を取得した者です。
例えば、父Xから子A・子Bが共同で土地を購入した後、Aが死亡し、BがA持分を相続して単独所有者となった場合が該当します。
さらに、父Xから子A・子Bが相続によって土地の共有持分を取得し、その後BがAからその共有持分を購入して単独所有者となった場合でもこの制度を利用できます。
申請ができる人 共有の場合
今度は共有の場合について見ていきます。
まずひとつ目が相続等により土地の共有持分を全部を取得した共有者が申請できます。
土地を単独所有する父Xから子A・Bがその土地の共有持分を2分の1ずつ相続(もしくは遺贈)により取得した場合は、A・Bともに申請することができます。
土地を共有する父Xから子Aがその共有持分を相続(もしくは遺贈)により取得した場合も申請が可能です。
申請できる場合の2つ目は、相続等により共有持分の一部を取得した共有者が申請できます。
例としては、第三者Yから父X・子Aが持分2分の1ずつで土地を購入し、その後にXが死亡し、Xの子A及びBがXの共有持分を法定相続分各2分の1を共同相続した場合がこの例です。
この例でいくと、A持分4分の3(相続で4分の1取得)、B持分4分の1となります。
Bは申請できることに問題ないですが、Aも相続により取得した持分を有するため申請することができます。
3つ目は、相続等以外の原因により共有持分を取得した共有者が申請できます。
第三者Yから父X、法人Zが土地を購入し(持分2分の1ずつ)、その後父Xが死亡し、Xの持分を子Aが相続により取得した場合です。
Aは申請できることには問題ないが、法人Zは申請できるのかが問題となります。
本来であれば、土地の共有持分の全部を売買や贈与等により取得した自然人である共有者や法人である土地の共有者は、土地の共有持分を自らの意思で取得したのであるから、原則は相続土地国庫帰属制度の承認申請権はありません。
しかし例外として、相続等により共有持分の全部又は一部を取得したものと共同で行うときに限り(今回の例はAと共同で)、申請できます。
まとめ
今回は、相続土地国庫帰属制度の概要と申請できる人を書きました。
この法律のキモは申請できる人とどの土地であれば国庫に帰属できるのかを見極めることに尽きます。
では相続土地国庫帰属法で国庫に帰属できる土地とは何でしょうか。
これはまた改めて紹介します。
今回は
『ブログ講義 「相続土地国庫帰属制度の概要」を江戸川区の司法書士が解説』
に関する内容でした。
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