相続法改正 2020年は「相続」に注目 相続登記も早いほうがいいかも?
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
ここ最近思うことは、多くの方が「相続」に関し関心を持っていること。
やはり、「相続法改正」の影響が大きいと思われます。
あと、質問が多いのは、相続登記に期限はあるのですかという内容。
今回はこの質問にお答えします。
相続法改正 2020年は「相続」に注目 相続登記も早いほうがいいかも?
相続登記に期限はあるのか?
まず、相続登記に期限はあるかという問いの答えを書きます。
法律では、相続登記をいつまでにしなければならない期限というのはありません。
なので、相続開始後、放置していても問題はありません。
と言いたいところですが、相続法改正により、そうも言えなくなっています。
その影響が出ているのが、民法の899条の2です。
共同相続における権利の承継の対抗要件
民法899条の2という規定が、今回の相続法改正で登場し、すでに施行されています。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2
1 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
不動産を所有していた人が亡くなって、子供AとBが相続人だった場合、遺言でAにすべての不動産を取得させる旨あった場合を想定します。
しかし、Bが借金を負っていて、債権者が当該不動産を差し押さえる前提として、法定相続分どおりに相続登記をしてしまうことがあります。
この場合、本来Aはすべての不動産について権利を有するところ、債権者に主張できるのは相続分の2分の1のみとなり、残りの2分の1については債権者に対抗できないということになります。
相続法改正前までは、差押前提の法定相続分の相続登記が入っても、Aはすべての権利を主張できていました。
実は、ここはかなり大きな相続法改正の部分といえ、もし遺言があれば、相続登記は速やかに行わないといけないことを意味しています。
費用や手間がかかるから後回しにしたい気持ちはわかりますが、民法899条の2という規定ができた以上、速やかな対応が必要です。
民法899条の2は、もらえなかった者が勝手に相続登記をしてしまい、その後第三者に売却した場合でも適用されてしまうので、自分の権利が主張できなくなり、不利益を被ります。
これを手当する法律が今のところない以上、遺言や遺産分割で権利を取得したものがいたら、早めに処理することが必要です。
まとめ
遺留分とか、配偶者居住権とか、相続法改正でそちらの方に目が行きがち。
でも共同相続における権利の承継の対抗要件は意外と重要な問題を孕んでいることを押さえてください。
今回は
『相続法改正 2020年は「相続」に注目 相続登記も早いほうがいいかも?[司法書士の日常]』
に関する内容でした。
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