東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
取締役会を置かない株式会社の代表取締役の問題。
意外と難しい論点がはらんでいます。
前回のブログ(「あわせて読みたい」で紹介します。)や今までのブログでも紹介しているので、ピンと来ている方もいるでしょう。
今回は代表取締役の辞任について書いていきます。
取締役会を置かない会社の代表取締役の登記の問題点 辞任編
取締役会を置かない代表取締役の法的地位は?
まず取締役会を置かない株式会社の取締役の地位は、代表権も有しています。
なので、取締役が2名いた場合、どちらも代表取締役として登記する必要があります。
しかし、代表取締役が2名いると第三者から見るとどちらと取引をしたらいいかわからないこともあります。
さらには会社運営上混乱することもありえます。
そこで、取締役が2名以上いる場合は、そのうち1名を代表取締役とするケースが多いです。
代表取締役を株主総会で選ぶのか、定款の互選規定によるかで代表取締役の法的地位が変わる
株主総会で代表取締役を選んだ場合、他の取締役の代表権の地位を剥奪するということになります。
つまり、代表取締役と取締役の地位が一体化していることになります。
一方、代表取締役を取締役の互選による旨定款で定めている場合、取締役と代表取締役の地位が分化しています。
取締役会設置会社の代表取締役と同じ扱いです。
2つの違いは代表取締役の地位のみ辞任する場合の手続きと添付書面で違いがでてきます。
代表取締役地位のみの辞任の手続と登記申請
株主総会で代表取締役を決める場合
代表取締役のみ辞任し、取締役として残る場合、代表取締役としての辞任届のみでは足りません。
理由は、取締役と代表取締役の地位が一体化しているため。
となると、代表取締役としての地位のみ辞任することができないかというと、株主総会の決議で、代表取締役のみの辞任決議をすれば問題ありません。
添付書面として辞任届の他に代表取締役のみの辞任決議をした株主総会議事録が必要です。
定款の規定に基き取締役の互選で代表取締役を選んでいる場合
こちらは取締役と代表取締役の地位が分離しているので、代表取締役の地位のみ辞任することが可能です。
添付書面として辞任届と、定款で代表取締役を取締役の互選で定めていることを確認するため定款の添付が必要です。
辞任届についての注意点
代表取締役を辞任するとき、押印する印鑑は法務局に届けている会社実印で押印するか、辞任する代表取締役個人の実印と印鑑証明書を添付するかいずれかの方法によります。
単に代表取締役の認印だけでは足りませんので注意してください。
まとめ
前回と今回で取締役会を置かない代表取締役についての注意点を書きました。
単に定款の雛形が代表取締役の選び方が「互選による方法」となっているため、代表取締役の選び方は会社設立時に検討する必要があることを念頭においてください。
前回と今回のブログ内容を表でまとめてみました。
株主総会で代表取締役を選定 | 定款で取締役の互選で代表取締役を選定 | |
代表取締役のみの就任登記の添付書面 | ・株主総会議事録 (議事録に押印する印鑑は出席取締役全員の個人実印と印鑑証明書 代表取締役(前任者も含む)が会社実印を押印している場合は他の取締役は認印可) |
・取締役の互選書 ・定款 ・就任承諾書 |
代表取締役のみの辞任登記の添付書面 |
・辞任届 (会社実印もしくは個人実印+個人印鑑証明書) ・株主総会議事録 |
・辞任届 (会社実印もしくは個人実印+個人印鑑証明書) ・株主総会議事録 |
今回は
『取締役会を置かない株式会社の代表取締役の選定・辞任登記の手続を確認しましょう!(その2 辞任編)』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
前回は代表取締役の就任についてのことを書きました。今回のブログとあわせて御覧ください。
取締役会を置かない株式会社の代表取締役の選定・辞任登記の手続を確認しましょう!(その1 選定編)
参考書籍
改訂版 ケース別株式会社・有限会社の役員変更登記の手続
永渕 圭一 日本法令 2017-05-17
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商業登記ハンドブック〔第3版〕
松井 信憲 商事法務 2015-05-20
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