東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
会社の規模を拡大するため、増資することが多々あります。
増資するということは、自己もしくは第三者に株式を引き受けてもらい、お金を入れてもらうことが多いです。
いわゆる「募集株式の発行」です。
今回、募集株式の発行について注意しなければならないことを私の体験を交え3つ紹介します。
募集株式の発行 実務上注意しなければならないことは?
募集事項の決議前に払込をした場合は有効か?
出資金の払込について、よく募集株式の募集事項決定前に振り込む例をよく見かけます。
しかし、株主総会で募集株式の募集事項決定前の出資金の払込をした場合、登記が受理されるかというと受理されません。
つまり、募集株式発行決議前の日付で通帳に出資金が入金・振込されていた場合は募集株式発行の登記はできないということです。
現に募集事項も何も決めていない、総数引受契約もしていない、払込日も決めていないとなると、なんで出資しているのか判明しないからです。
なので、株主総会の募集事項の決議が終わったら出資するように引受人に言っておくことが重要です。
万が一株主総会の募集事項の決定前に出資しているのであれば、引受人の許可を得て、一旦出資金を引き出し、再度入金するしか方法はありません。
出資額より多く振り込んでしまった場合でも登記は受理されるか?
例えば、今回100万円出資するところ何らかの事情で200万円振り込んできた場合です。
この場合は、一度200万円を引き出して、再度100万円入金し直さないと登記は受理されないのでしょうか?
結論は、「払込があったことを証する書面」に、「200万円振込していますが、今回の募集株式分は100万円です」などと記載しておけば、登記は受理されます。
私の場合はさらに「資本金の額を証する証明書」にも、上記事情を書いて登記申請をし、受理されました。
なので、払込金額が本来出資する額より多くても、「払込があったことを証する書面」に事情を書くことで問題ありません。
ただ、出資額と振込額の差があまりにも大きいとき、例えば、出資額が100万円で振込額が1,000万円の場合は問題が出てきそうです。
総数引受契約をするときの注意点は?
募集株式が譲渡制限株式の場合において、募集株式を総数引受契約で行う場合は注意が必要です。
平成27年5月施行の改正会社法で、非公開会社の募集株式発行に際し、総数引受契約で行う場合は、株主総会(取締役会設置会社に置いては取締役会)の承認が必要です。
趣旨としては、持株比率の維持と会社が好まない者の参入を阻止するため、総数引受契約にもこの規定を改正法で導入しました。
総数引受契約を締結する時期についてですが、承認決議前であっても承認決議後もあっても構わないとされています。
(参考書籍 「事例で学ぶ会社法実務より」)
なお、総数引受契約を承認した株主総会議事録(もしくは取締役会議事録)は登記の添付書面となります。
もし、取締役会設置会社で定款で総数引受契約を株主総会で行う旨規定があれば、さらに定款の添付も必要です。
まとめ
募集株式の発行については、募集事項決定後に決められた金額を入金してもらうことでトラブルを防ぐことが可能です。
非公開会社で総数引受契約による募集株式を発行する場合、株主総会もしくは取締役会が必要であることを忘れないようにしてください。
今回は
『募集株式の発行 実務上留意することをまとめました』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
種類株式を発行する場合の留意点についてまとめてみました。こちらもぜひ御覧ください!
参考書籍
事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕
金子 登志雄,立花 宏,幸先 裕明 中央経済社 2018-04-18
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