東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
会社法が施行されるようになってから、種類株式の発行についてより柔軟的になりました。
ところで、株主総会の決議につき、全部もしくは一部につき、議決権を有しない株式を発行することが可能です。
「無議決権株式」と言われますが、発行する際に気をつけないといけないことはあるのでしょうか。
今回は無議決権株式を含む種類株式について書いていきます。
無議決権株式を発行するときの留意点とは?
普通株式の一部を完全無議決権株式にする場合の添付書面は?
普通株式の一部を完全無議決権株式に変更する場合変更登記申請書には、以下の書類が必要とされています。
- 株式の種類を追加する旨の定款変更にかかる株主総会議事録
- 株式会社と完全無議決権株式への変更を希望する株主との合意を証する書面
- 他の普通株式にとどまる者全員の同意を証する書面
しかし、3につき、普通株主にとどまる者が一切の不利益を被らない場合は、3に代え、その旨を証明する上申書を添付して差し支えないとされています。
あと、登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合に該当するので、株主リストの添付が必要になります。
あと、種類株主全員の同意を要する場合にも該当するので、種類株主全員を記載した株主リストも添付する必要があります。
不利益を被らない場合は同意を証する書面
が不要になる場合もありますが、種類株主の株主リストまでも不要になるかは現段階では不透明です。
私見は念のため種類株主の株主リストも用意します。
種類株主総会が必要かどうかの判断に注意!
種類株主総会が必要となる場合は
- 譲渡制限株式の増加による場合
- 種類株主が不利益になる場合
の2つが考えられます。
会社法199条4項について(募集株式の増加による場合)
まず、会社法199条4項に注意が必要です。
募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について、当該種類株主総会の決議がなければ効力が生じないとされています。
譲渡制限株式については持株比率で変わってくるので、当該種類株主にとって不利益となるからだと言われています。
しかし、定款で当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合は、種類株主総会の決議は不要です。
また、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主がいない場合も決議が不要です。
なお、会社法199条4項は定款の相対的記載事項ですが、登記事項にはなっていません。
会社法第322条1項1号(不利益になる場合)
会社法322条1項1号は、ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会の規定です。
種類株主に損害を及ぼす定款の変更決議については下記のとおりです
- 株式の種類の増加
- 株式の内容の変更
- 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
なお、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主がいない場合も決議が不要です。
注意してほしいことは、322条1項1号の場合は定款でも種類株主総会をすることを要しない旨を定めることができないこと。
つまり、種類株式発行会社で、上記定款変更決議をする場合は、必ず種類株主総会を開催しなければならないことです。
これは完全無議決権株式でも同様です。
まとめ
種類株式は意外とややこしい論点が混じっています。
完全無議決権株式といっても、募集株式の募集事項の決定や定款変更で不利益になる場合は種類株主総会が必要だということを理解してください。
今回は
『種類株式の発行 発行時に注意しなければならないことは?』
に関する内容でした。
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参考書籍
事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕
金子 登志雄,立花 宏,幸先 裕明 中央経済社 2018-04-18
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募集株式と種類株式の実務【第2版】
金子 登志雄,富田 太郎 中央経済社 2014-05-21
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