東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
有限会社で目的を変えようと思います。
株主総会の特別決議が必要だと思うのですが、株式会社と決議要件が違うと聞きましたが、本当でしょうか?
有限会社の経営者の方からこのような相談を受けました。
本当に有限会社と株式会社の株主総会の特別決議で決議要件は異なるのでしょうか?
今回は(特例)有限会社の株主総会の特別決議について書きます。
有限会社では株主総会の特別決議のハードルが高いのは本当ですか?
株主総会の特別決議をするときは要注意!
例えば、冒頭のように目的変更は定款変更にあたるため、特別決議でする必要があります。
通常の株主総会の特別決議は、以下のとおりです
当該株主総会において議決権を行使する事ができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う
なお、定足数については定款で3分の1までに軽減することは可能ですし、議決権数を定款で加重することは可能です。
定足数をむやみに軽減することのリスクについては以前ブログで書きましたので、参照してください。
一方特例有限会社の場合の株主総会の特別決議の要件は以下のとおりです。
総株主の半数以上であって、当該株主の議決の4分の3以上の多数をもって行う。
株式会社と比べてください。
有限会社の場合、特別決議の要件が重くなっています。
有限会社の特別決議の要件を株式会社の特別要件と比較する
有限会社の場合の株主総会の特別決議の要件を詳しく書くと、以下のとおりです。
頭数要件として、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)
かつ
決議要件として、総株主の議決権の4分の3(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数をもって行う
株式会社と違い、定足数が株主数で決められているので、株主が多いと、定足数を満たさない事態になります。
株式会社の特別決議と比べて、特例有限会社の場合の株主総会の特別決議はハードルが高いことがおわかりいただけたでしょう。
実際に例を示します。
総株主が4名
株式数が100株
保有数が A70株 B10株 C10株 D10株
株式会社の場合、特別決議は定款の規定がないとした場合、Aのみ株主総会に出席すれば、特別決議の定足数を満たします。
さらに全員出席した場合、Aだけが賛成しても、決議要件の3分の2を満たしますので決議が有効に成立します。
しかし、有限会社の場合はそうはいきません。
株主総会にAが出席しただけでは、特別決議の定足数を満たしません。
仮に全員が出席した場合、Aだけが決議に賛成しても決議要件をの4分の3を満たしません。
以上の例からも、株式会社の特別決議要件に比べハードルが高いことがおわかりいただけたでしょう。
株式が分散してしまうと、特別決議自体できなくなる恐れがあります。
特に相続が起きると、株式が分散してしまい、定足数が揃わず、重要な事項が決議できません。
有限会社の特別決議の決議要件を定款で株式会社と同じようにすることはできるか?
では、有限会社で定款を変更して、株主総会の特別決議と同一要件とすることができるでしょうか?
答えはできません。
有限会社である以上、株主総会の決議要件を定款で変えることは法律上できません。
どうしても決議要件を変えたいならば、有限会社から株式会社に商号変更(特例有限会社から株式会社へ移行する)手続きが必要です。
まとめ
今回の内容をまとめると・・・
・有限会社の株主総会の特別決議は、
株式会社と比べるとハードルが高い・有限会社の株主総会の特別決議の要件を定款で株式会社の特別決議と同様にすることはできない。
有限会社の場合、小規模の会社、閉鎖的な会社を予定しているので、株主が増える規模を大きくしたい場合は、株式会社に移行したほうがいいでしょう。
今回は
『有限会社では株主総会の特別決議のハードルが高いのは本当ですか?』
に関する内容でした。
参考図書
特例有限会社の登記Q&A
神崎 満治郎 テイハン 2015-06
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