有限会社も新たに株式の発行や種類株式、新株予約権を発行できるのか?
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
「建設業の許認可を取得するため、どうしても増資したい。
有限会社のままでは増資できませんか?」
こういう質問がきました。
果たして、有限会社でも募集株式発行による増資などは可能なのか。
今回は、有限会社と募集株式の発行、新株予約権・種類株式の発行の可否について検討します。
有限会社も新たに株式の発行や種類株式、新株予約権を発行できるのか?
特例有限会社でも募集株式の発行はできる?
(特例)有限会社でも、通常の株式会社と同様、募集株式の発行をすることができるかの答えは、当然にできるが答えです。
平成17年の整備法では、有限会社の募集株式については別段の定めがありません。
別段の定めがない以上、有限会社でも募集株式の発行は可能を意味しています。
募集株式の発行の流れは、株式会社の募集株式の発行の場合と変わりません。
募集株式の流れは
- 募集事項の決定
- 募集事項の決定の委任
- 株主に株式のに割当てを受ける権利を与える場合の取扱い
- 募集事項等の通知及び募集株式の申込み
- 募集株式の割当て
- 募集株式の総数引受契約を行う場合の特則
となります。
募集株式発行の際注意しなければならないことは?
有限会社で募集株式を発行するときは、以下の点に注意する必要があります。
・募集株式発行の際の決議
募集事項の決定について、株主総会の特別決議が必要です。
有限会社の場合、特別決議の要件が株式会社の特別決議の場合と異なりますので注意です。
有限会社の場合、特別決議の要件は
総株主の半数以上であって、当該株主の議決権4分の3以上の多数をもって行う
となっています。
頭数要件と成立要件が株式会社の特別決議と違うのが分かるでしょう。
最後のページに参考ブログを紹介しますので、合わせて御覧ください
・取締役による決定
募集株式等(自己株式を含む)を発行する際、株主に割当てを受ける権利を与える場合も注意です。
当該募集事項及び会社法202条1項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがあるときは、取締役の決定によって定めることができます。
定款に上記定めがない場合は、株主総会の特別決議になりますので注意です。
特例有限会社でも新株予約権や種類株式は発行できるのか?
募集株式同様、整備法に特段規定はありませんので、有限会社でも新株予約権や種類株式の発行は可能です。
新株予約権発行の場合は、募集株式同様注意しなければならないことがあります。
種類株式については、譲渡制限付種類株式を発行する場合は、内容は整備法で定められており、それと異なる定めをすることができません。
種類株式については、事業承継等で発行する可能性はありますが、新株予約権は有限会社で実際に発行するかは未知数です。
まとめ
今回のテーマのまとめです。
- 有限会社でも募集株式・新株予約権・種類株式の発行は可能
- 募集株式(新株予約権)の募集事項の決議の際の株主総会の決議要件に注意
有限会社も株式会社の一種なので、整備法に制限がなければ、株式会社と同様にできるということも覚えておくといいでしょう。
参考ブログ
有限会社では株主総会の特別決議のハードルが高いのは本当ですか? – 司法書士行政書士きりがやブログ(きりログ)
参考図書
特例有限会社の登記Q&A増補・改訂版
神崎満治郎 テイハン 2019年11月
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