「会社設立アドバイザー」
東京都江戸川区葛西駅前の
司法書士・行政書士の桐ヶ谷淳一です。
監査役に関する権限の登記の問題点を探る
平成27年5月に改正会社法が施行されました。
監査役の範囲に関する登記が今回の改正で新たに追加されました。
この登記は、すぐに登記をする必要はなく、改正後、最初に監査役に関する登記と同時にすればいい扱いになっています。
つまり、登記するのを猶予されているという考えです。
そこで問題が出てきました。
中小企業で株式譲渡制限設置会社(非公開会社)で監査役を置いている会社があるとします。
その会社の監査役の権限は会計に関するものに限るものと定款でみなされています。
その会社が平成27年6月に監査役を廃止する場合、「監査役の監査の範囲に関する登記」をする必要があるのか問題です。
今回はその論点をあげてみます。
「監査役の範囲に関する登記」必要説・不要説両方あるが・・・
目次
登記必要説・不要説とは?
ますは登記必要説・不要説を解説していきます。
登記必要説は、登記義務が発生しているのであれば、登記が必要であるという考えです。
あくまでも、監査役の登記が発生するまでは「監査役の範囲に関する登記」については猶予されているに過ぎない。
登記事項が発生している以上、登記簿に公示する必要がある。
だから当然に必要だという考えです。
登記不要説は、登記が猶予されている期間に、廃止しているのであるからそもそも登記自体は消滅している。
なので、登記簿上表すことができない、だから登記はいらない という考えです。
司法書士の先生方の見解は?
司法書士の間でも、必要か不要か意見が分かれています。
商業登記の権威のある京都の内藤先生は必要説・東京の金子先生は不要説のようです。
内藤先生のブログ
監査役の監査の範囲に関する登記と経過措置(3) – 司法書士内藤卓のLEAGALBLOG
監査役設置会社の定めの廃止と「監査役の監査の範囲に関する登記」 – 司法書士内藤卓のLEAGALBLOG
金子先生の2015年5月15日の『「登記をすることを要しない」の意味』
法務省の見解は?
どうやら、法務省は、監査役の範囲の登記について、下記資料を見る限り、登記不要説を採用しているようです。
監査役の変更の登記が会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の施行日である平成27年5月1日以降最初の監査役の退任の登記である場合には,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨の登記及びその廃止の登記をする必要はありません。
つまり、法務省の上記見解だと、平成27年5月以降に「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の廃止をした場合、登記をすることを要しないことになります。
個人的には、本来であれば公示する必要があるが、結局は無意味なものになるから登記は不要である考えには賛成です。
正直会社側で判断すればいいかとも思えるのです。
会社サイトとしては、コンプライアンスの観点もあり、監査役の範囲の登記を入れてくれというところも出て来るかもしれません。
会社側でやっぱり監査役の監査の範囲の登記を入れてほしいといわれた場合は、監査役の範囲の登記を申請してもいいでしょう。
まとめ
私の見解は、監査役の廃止の登記に際し、「監査役の権限の登記」を入れる必要はないという見解です。
ただ、会社にその事情を聞いた上で対処するのがいいのではないでしょうか。
不要説といってもあくまでも便宜的に認められたに過ぎないということは意識しておいたほうがいいでしょう。
必要説の考えも、いわれてみれば納得する部分もあります。
答えにはなっていないと思いますが、自分の会社の判断で登記をするか否か決めればいいのではないでしょうか。
今回もご覧いただきありがとうございました。
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