会社設立の発起人・取締役は未成年者でもなることができるか?
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
昨今の大学生の方は活動が活発的で、自分で起業したいという方も出ています。
大学1年で起業するとなるとまだ未成年者。
民法では行為制限能力者として、親権者の同意が必要など一定の制約を受けてしまいます。
未成年者だった場合どうなるのか。
そこで、未成年者がそもそも取締役になれるのか、会社設立できるのかについて考察していきます。
会社設立の発起人や取締役 未成年者がなることができますか?
未成年者は取締役の欠格事由にあたるか?
そもそも取締役になることができない場合を会社法では規定しています。
会社法では、被後見人や被保佐人、法人が取締役の欠格事由に当たります。
第331条第1項
次に掲げる者は、取締役となることができない。
一 法人
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第197条 、第197条の2第1号から第10号まで若しくは第13号、第198条第8号、第199条、第200条第1号から第12号まで、第21号若しくは第22号、第203条第3項若しくは第205条第1号から第6号まで、第15号若しくは第16号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条 、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条 、第66条、第68条若しくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条 、第267条、第269条から第271条まで若しくは第273条の罪若しくは破産法(平成16年法律第65号)第265条 、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
未成年者は取締役の欠格事由にあたらないため、取締役に就任することはできます。
未成年者は株式会社設立の発起人になれるのか?
未成年者が会社に出資して発起人になることについて、会社法では制限はありません。
よって、未成年者でも株式会社設立の発起人になることはできます。
合同会社の出資者になることも可能です。
未成年者が発起人になり、金銭を出資することや定款認証の行為は法律行為に該当するので、親権者の同意が必要です。
ところで、未成年者が発起人となる場合、定款認証手続きはどのようにするのでしょうか。
未成年者が15歳未満の場合、意思能力がほとんどないとすると 、印鑑登録証明書の交付も受けられないので、 親権者代理による処理をすることとなります。
また、意思能力があるとして、親権者同意による方法も可能とも解されています。
すでに未成年者が印鑑証明書発行できる状態の場合は、意思能力はありとなり(概ね15歳以上)、親権者の同意を得れば発起人になることができます。
親権者が未成年者とともに発起人となる場合、定款末尾の記載方法は、以下のとおりです
発起人 甲野一郎(未成年者) (印鑑証明書を発行できる場合は押印)
発起人兼発起人甲野一郎の法定代理人父甲野太郎 実印押印
発起人兼発起人甲野一郎の法定代理人母父甲野花子 実印押印
(電子定款の場合)
発起人甲野一郎、発起人甲野太郎、発起人甲野花子
甲野一郎、甲野太郎、甲野花子の定款作成代理人 乙野次郎 電子署名
添付書面は以下のとおりです
<紙申請の場合>
- 親権者の3ヶ月以内の印鑑証明書
- 未成年者の戸籍謄本(親権者が記載されているもの)
- 未成年者の住民票(親権者と同居していない場合)
<電子定款の場合>
- 未成年者・親権者から司法書士等への委任状
(委任状末尾記載)
発起人甲野一郎(未成年者) 押印不要
発起人甲野一郎の法定代理人父発起人甲野太郎 押印
発起人甲野一郎の法定代理人母兼発起人 甲野花子 押印 - 親権者の印鑑登録証明書(3か月以内)
- 未成年者の戸籍謄本 (未成年者記載)
- 未成年者の住民票(親権者と同居していない場合)
(未成年者が印鑑証明書を添付できる場合 同意方式)
<紙定款の場合>
- 未成年者・親権者の印鑑登録証明書(3か月以内)
- 未成年者の戸籍謄本(親権者記載)
- 親権者の同意書(定款に法定代理人父母の記名押印があれば不要。親権者が記名押印していない場合は、同意書が必要。)
<電子定款の場合>
- 未成年者・親権者から司法書士への委任状
(委任状末尾記載)
発起人甲野一郎(未成年者) 押印
発起人甲野一郎の法定代理人父兼発起人甲野太郎 押印
発起人甲野一郎の法定代理人母兼発起人甲野花子 押印 - 未成年者、親権者の印鑑登録証明書(3か月以内)
- 未成年者の戸籍謄本(親権者記載)
- 親権者の同意書(委任状に法定代理人父母の記名押印があれば 不要。親権者が記名押印していない場合は、同意書が必要。)
未成年者が取締役に就任する際に注意することは?
取締役に就任することは会社との委任関係にあることになります。
これも一種の法律行為なので、会社設立や取締役の選任登記の際は、親権者の同意書、親権者の印鑑証明書、戸籍謄本が必要です。
取締役が未成年者の場合、印鑑証明書が発行できるかどうかで、取締役になれるかどうかが変わってきます。
印鑑証明書を発行できるのは15歳以上。
なので、以下の場合は15歳以上にならないと就任することができません。
- 取締役会非設置会社の取締役
- 取締役会設置会社の代表取締役
裏を返せば、取締役会設置会社の取締役は意思表示ができれば15歳未満でもなれます。
登記簿からみてもわからないので、会社の自己責任はなるでしょうが・・・
合同会社の社員になることは可能か?
合同会社の業務執行社員についても株式会社同様、未成年者でもなることはできます。
代表社員もなることが可能ですが、印鑑届書を提出するとき、印鑑証明書を添付する必要があるため、15歳未満のものが代表社員になることは事実上難しいと思われます。
未成年者は株主になることはできるか?
未成年者が発起人になれることから、会社の株主になり、権利行使をすることも可能です。
株主総会で議決権を行使することについて、親権者の同意が必要かについては、法律行為に該当すれば同意は必要です。
まとめ
未成年者でも会社設立ができ、取締役にもなれることをご理解いただけたでしょうか。
ただ、印鑑証明書は15歳からでないと発行できないため、会社の代表権は15歳未満はできないことも覚えておいてください。
今回は
『会社設立・取締役 未成年者でもなることができますか?』
に関する内容でした。
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参考書籍
商業登記ハンドブック〔第3版〕
松井 信憲 商事法務 2015-05-20
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