東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
私の会社は、株券を実際には発行していません。
久しぶりに登記簿を取得したら、株券発行の旨の記載がされていました。
なぜですか?
ある経営者からの質問です。
実際には株券を発行していないのに、なぜ株券発行の旨が定められているのでしょうか。
その疑問にお答えします。
私の会社なぜ株券発行の旨が登記簿に記載されていのですか?
株券を発行するか発行しないか、会社法ではどう規定されているか?
株券とは株式会社の株主が持つ株式を表章する有価証券のことをいいます。
中小零細企業では、市販の株券用紙にチェックライター等で株数その他の必要的記載事項を記載することが多いです。
会社法では、株券を発行しないことが原則で、例外として株券を発行することができます。
株券を発行する場合はその旨を定款で規定します。さらに、株券を発行する旨が登記事項となります。
平成18年4月30日までは原則と例外が逆であった
会社法施行前の商法時代は、原則と例外が逆でした。
つまり、株券を発行することが原則で、例外で定款で株券を発行しない旨を定めることができました。
そして、株券を発行しない旨が登記事項となっていたのです。
なぜ登記簿に株券発行の旨が記載されているのか?
平成18年5月から会社法が施行されました。
そのときに株券発行については原則は不発行、例外が発行と変わりました。
なので、株券発行会社にあっては会社法になり、自動的に例外扱いされ、別に株主総会で株券発行会社とする決議をしていなくても、定款で株券を発行する旨の定めがあるものとみなされました。
そして、株券発行の旨が登記事項とされたため、法務局の職権で勝手に株券発行の旨が登記されたのです。
逆に、株券不発行会社の場合、会社法施行前は、登記事項として株券不発行の旨が記載されていました。
しかし、会社法になり、株券不発行が原則となり、登記事項ではなくなりました。
なので、株券不発行の旨の定めは職権で削除されました。
ここまで来るとややこしいですね。
株券発行の旨を登記簿から消したいのですが・・・
会社法施行前から株式会社として存在している場合、株券発行会社のままになっていることが中小零細企業では多いです。
実際には株券を発行していない場合、登記簿に記載されている内容と抵触しますよね。
その場合は、定款でみなされている株券発行の旨を変更して、株券不発行にする定款変更手続をすれば矛盾は解消されます。
定款変更手続を要するため株主総会の決議が必要ですし、登記申請も必要となります。
まとめ
中小零細企業で登記簿で未だ株券発行の旨が記載されている会社は多いです。
会社法施行時に定款で株券発行の旨とみなされ登記簿に記載された経緯があることをご理解ください。
株券発行の旨の定めをなくすこともできるので、詳しくはご相談ください。
今回は
『自分の会社株券発行していないのになぜ株券発行のことが登記簿に記載されているのですか?』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
株券発行の旨のことを含め、株式会社設立後定款変更をどのように行うか。こちらのブログでまとめました。
あわせて御覧ください。
参考書籍
商業登記ハンドブック〔第3版〕
松井 信憲 商事法務 2015-05-20
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株式・種類株式<第2版> (商業登記全書)
森木田一毅,岡田高紀 中央経済社 2015-09-19
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