こんにちは、東京都江戸川区船堀に事務所を構える「相続・会社設立に」に特化した事務所、司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
会社が事業をしていない場合、会社を休眠にして維持する方法と、完全に解散して清算する方法があります。
相続の観点で考えると、どちらが最適かを判断することが重要です。
今回は、休眠と解散の違い、相続に備えるための手続きや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
会社を休眠状態にする方法とメリット・デメリット
休眠とは、事業活動を一時停止し、会社を維持する状態のことです。
主に税務署への手続きを行う必要があります。
税務署への異動届出書の提出
会社が休業していることを税務署に届け出ると、毎年の法人税申告が不要になります。届出書には会社名、所在地、代表者情報、休業期間を記載し、休業の意思を明確にします。
法務局への登記
よく法務局に「休眠会社にするための手続きは何か必要ですか?」という問い合わせを受けます。
法務局への特別な「休眠届」は不要です。
しかし、株式会社の場合、登記を12年間更新しないと「みなし解散」として会社が自動的に解散されるリスクがあります。
休眠会社になったからといって、登記手続きまで免除されるわけではありません。
会社が休眠状態でも役員変更登記等をしておくと、会社が休眠状態のまま維持できます。
会社を休眠状態にするメリット
低コストで会社を維持:
休眠状態にすると、毎年の申告手続きが免除され、維持コストを抑えられます。
再開が容易:
休眠状態にしておけば、事業を再開する際にスムーズに活動が再開できます。
相続に有利な場合も:
相続の際、会社が存在していることで、財産や権利の継承がしやすくなるケースがあります。
例えば、不動産を会社名義で保有している場合、そのまま会社を相続させる方が手続きがシンプルになることもあります。
会社を休眠状態にするデメリット
登記維持が必要:
12年放置するとみなし解散となるため、定期的な登記の維持が必要です。
異動届を出さない場合のリスク:
異動届を提出せずに放置した場合、休業中でも毎年の法人税申告が求められ、手続きを怠るとペナルティが発生する可能性があります。
また、税務署から申告漏れの指摘が入ることもあります。
会社を解散・清算する方法とメリット・デメリット
解散・清算とは、会社を完全に閉じ、法的に会社を消滅させる手続きです。
今後会社を利用する予定がなく、相続人に会社の負担を残さないために解散・清算するケースもあります。
株主総会で解散決議
株主総会(ひとり会社なら一人の承認)で解散・清算人選任の決定をし、議事録を作成します。
法務局で解散・清算人選任登記
法務局に解散登記・清算人選任の登記を行い、会社の解散と清算人選任を法的に記録します。
解散公告を出す
官報等に解散した旨の公告を出します。
清算人を選任して清算手続き
解散後、清算人が会社の財産を整理し、負債を処理します。
完了後に「清算結了登記」を行います。
ただし解散公告をしてから2ヶ月を経過しないと清算結了の登記を申請できないので注意です。
よく解散登記をすれば会社たたんだことになると思っている方がいますが、「清算結了」をしてはじめて会社をたたむことになります。
なので、解散することを決めてからすぐには会社をたたむことはできないことに注意してください。
会社を解散するメリット
維持費や手続きから解放:
解散後は税務署や法務局への申告が不要になり、費用が発生しなくなります。
相続手続きが簡単:
会社が解散していることで、相続の際に会社に関する複雑な手続きが不要になり、財産の継承がシンプルになります。
会社を解散するデメリット
再開が難しい:
解散後に再開する場合、新たに会社を設立し直さなければならないため、手間がかかります。
清算手続きが煩雑:
解散後の清算では、債務や財産の整理が必要で、清算人の選任と手続きの管理が求められます。
相続に備えるための判断基準
事業再開の可能性がある場合:
事業再開を少しでも考えている場合は、会社を休眠にする方が良いでしょう。
休眠状態であれば、低コストで会社を維持しつつ、再開の選択肢を残せます。
会社を継ぐ意志がない場合:
相続人が会社を引き継ぐ予定がない場合は、解散・清算する方が合理的です。
解散することで、相続時に複雑な手続きを避けられるため、相続人に負担がかからず、財産の整理がスムーズに進みます。
実際の休眠会社の事例と相続との関係
あるひとり会社の経営者が、事業を停止してから数年間、会社を放置していた結果、税務署から申告の督促が届きました。
そこで税務署に「異動届出書」を提出し、正式に休眠状態としたことで、毎年の申告の手間を省き、維持コストを最小限に抑えられるようになりました。
さらに、相続時にもこの手続きが役立つことがわかりました。
会社が休眠状態であれば、相続手続きの際に余計な税務申告が不要で、円滑に会社の整理や継続ができた事例です。
このように、休眠状態にすることで、相続手続きの簡便さにもつながるメリットがあります。
そのうえで、会社を継続することが想定されないことがわかったので、生前相続対策の一環として会社をたたむことにしました。
まとめ
会社が活動していない場合、休眠にするか解散するかの判断が重要です。
再開の可能性が少しでもあるなら、会社を休眠にしておき、維持費を抑えつつ将来の選択肢を残すことが有効です。
一方で、会社を継ぐ意志がなく、相続人に負担をかけたくない場合は、解散・清算の選択肢を取ることが推奨されます。
どちらを選択するかをよく検討し、将来に備えた手続きを進めましょう。
ぜひ、少しでも気になることがあれば、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
江戸川区船堀、宇喜田、葛西、東小松川地域にお住まいの方で、相続・会社経営(商業登記を軸とした企業法務)に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
当事務所のウェブサイトをチェック
今回は
『事業をしていない会社をどうする?相続対策としての休眠と解散のポイント』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
最新のブログはこちら