商業登記規則61条5項の問題点とは?
先日、会社法・商業登記規則の改正
について、東京司法書士会江戸川支部で
講師をしてきました。
その際に、質問があり、不明なところが
あったので、調べてみました。
事例
取締役A・B・C、代表取締役がAの
取締役会設置会社で、取締役Aが辞任し、
新たにDを選任し、Dが代表取締役となる
場合、Dについて商業登記規則61条5項の
本人確認証明書が不要ではないか。
まず、添付書面ですが、
- 取締役Dを選任した株主総会議事録
- 代表取締役Dを選定した取締役会議事録
- 取締役・代表取締役Dの就任承諾書
-
代表取締役選定の際に押印する印鑑
についての印鑑証明書
が必要です。
そこで問題になるのが、
Dについて、商業登記規則61条5項でいう、
就任承諾書について住所記載と
本人確認証明書が必要ではないか
ということ。
私も必要ではないかと思っていました。
商業登記規則61条5項が適用される流れとは?
早速調べてみると、中央経済社から発刊
されている
「平成27年施行改正会社法と
商業登記の実務論点」
153ページ以下に似たような論点がありました。
平成27年施行 改正会社法と商業登記の最新実務論点
金子 登志雄 中央経済社 2015-11-18
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まず、商業登記規則61条の並び順で
考えるべきであること。
商業登記規則61条2項から4項までの流れを
簡略化すると、以下のとおりになります。
①取締役の就任承諾書には実印を押印し、
印鑑証明書が必要(2項本文)②取締役が再任の場合は実印押印が
いらない(2項ただし書)②取締役会設置会社の場合は「取締役」
となっているのを「代表取締役」と
置き換える(3項)③代表取締役選定のついての議事録につき
出席取締役等が押印するに際し、実印で
押印し、印鑑証明書が必要。(4項本文)④議事録に法務局に届けている会社印と
同一の印鑑が押印されている場合は、
実印と印鑑証明書が省略できる
(4項ただし書き)
これらの要件が満たさない時に初めて、
5項が問題になるとされているのです。
⑤上記以外の場合は、取締役の
就任承諾書に住所を記載し、
「本人確認証明書」を添付する
以上が流れです。
となると、
Dさんは、61条3項で実印を押印していて、
印鑑証明書を添付しているので、
本人確認証明書の添付がいらない
ということになります。
住所の記載はどうか
61条5項ただし書きの場合、
つまり就任承諾書に実印を押印してあり、
印鑑証明書を添付する場合、
住所の記載は省略できるのか
が問題になります。
ただし書きに該当する場合、
就任承諾書や議事録に住所の記載が
なくても、問題ないとされています。
なので、Dさんは議事録や就任承諾書に
住所の記載がなくても、
61条4項で実印押印と印鑑証明書を添付
するので、61条5項ただし書きに該当し
住所の記載を要しないことになります。
まとめ
61条5項の読み方について
・取締役の就任承諾書(もしくは
株主総会議事録に実印が押印されて
いる)
・実印が押印されていなくても、
該当取締役が再任に当たるか
・代表者選任の議事録に実印が
押印してあるかどうか
そこに該当しない場合にはじめて
商業登記規則61条5項の問題が出てくる
と認識したほうがいいでしょう。
ただ、判別がつかない場合は
住所記載と本人確認証明書を用意して
もらうのが得策だといえます。
さらに監査役の場合が問題になりますが、
それは次回改めて書きます。
平成27年施行 改正会社法と商業登記の最新実務論点
金子 登志雄 中央経済社 2015-11-18
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