東京都江戸川区葛西駅前 会社設立などの企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
2018年11月30日より、定款認証の制度が変わります。
ここでキーワードとなるのは「実質的支配者」と何かという点。
実質的支配者に暴力団員等がいると、公証役場で定款認証ができません。
では、実質的支配者をどのように認定していくのか、今回解説していきます。
定款認証の制度が変わります!実質的支配者とは何か?
「実質的支配者」の定義
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある自然人のことをいいます。
具体的には「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」第11条2項で定義されています。
なお、上場企業等及びその子会社は、「自然人」とみなされるので注意して下さい。
この2項で定義されている実質的支配者についての氏名、住居、生年月日、暴力団員等に該当するか否かを定款認証時の嘱託人が公証人に申告することになります。
実質的支配者を認定する手順
実質的支配者を認定する手順について、まずは株式会社の場合を紹介します。
(1)議決権の直接保有及び間接保有が50%を超える自然人がいるか
ひとり株式会社の場合は、ほとんどこの条件に当てはまるので、その方が実質的支配者となり、申告の対象となります。
発起人が複数いる場合、誰か一人でも保有株式数が51%いれば、原則その者が「実質的支配者」となります。
なお、直接保有とは、自然人が発起人となり、出資して株式を保有することをいいます。
間接保有とは、自然人の支配法人(当該自然人が50%を超える議決を有する法人)が発起人となり、設立会社に出資して株式を保有することをいいます。
保有議決権数の認定は、直接保有と間接保有の合計数によります。
(1)の場合、該当者1名が実質的支配者となりますが、この者が事業経営を実質的に支配する意思又は能力(実質的支配意思等)がないことが明らかな場合には、実質的支配者に該当しません。
この場合は(3)で判定するとされています。
(2)(1)による実質的支配が存在しない場合、議決権の直接保有又は間接保有が25%を超える自然人がいるか
Aさん、Bさん、Cさん、Dさんが会社設立時、議決権数がAさん、Bさん、Cさんが30%、Dさんが10%保有する場合、Aさん、Bさん、Cさんの3名が「実質的支配者」となります。
25%直接又は間接保有しているすべての者が実質的支配者に該当することとなるからです。
ただし、実質的支配意思等がないことが明らかな者は実質的支配者に該当しません。
(全員が非該当になると(3)で判定されます)
さらに注意なのは、実質的支配意思等のある25%超保有者がいても、他に実質的支配意思等がない議決権50%超保有者がいる場合は(2)の方法は使えず、(3)で判定することになります。
持株比率が51%と49%の株式会社を設立するに当たり、51%の株主が実質的支配者に該当しない場合が上記の例となります。
(3)(1)及び(2)による実質的支配者が存在しない場合 出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人がいるかどうか
この場合は、該当者すべて実質的支配者に該当します。
(4)(1)、(2)及び(3)による実質的支配者が存在しない場合
この場合は、設立する株式会社の代表取締役が実質的支配者となります。
個人的見解を書きます
前回も書きましたが、ひとり株式会社設立の場合は、上記(1)で実質的支配者はひとりだけなので、悩まずに済むでしょう。
もしくは共同で設立して、誰かが議決権の過半数を持てば(1)に該当するので、心配することはないでしょう。
会社設立時に発起人が多く、(1)(2)にも該当しない場合が面倒な気がします。
あと、(1)の場合でも、法人が発起人となる場合、上場企業やその子会社でない限り、その法人の議決権数の過半数を保有している方が実質的支配者となります。
なので、その場合は発起人の会社の登記事項証明書と当該会社の株主名簿等が必要になり、ちょっと面倒ではあります。
まとめ
上記(1)及び(2)は実質的支配者が比較的わかりやすいですが、(3)の場合は誰が実質的支配者となるのか分かりづらいかもしれません。
あと外国会社の場合、実質的支配者の扱いはどうなるのか疑問に残ります。
誰が実質的支配者になるか判別できない場合は、公証人と打ち合わせることをおすすめします。
今回は
『小さな会社の法務 定款認証の制度が変わります!「実質的支配者」とは?』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
2018年11月30日からのひとり株式会社の定款認証の注意点についてはこちらのブログを御覧ください。
参考書籍
会社法定款事例集
田村 洋三 日本加除出版 2015-07-01
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