東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
最近何かと話題の民事信託(家族信託)。
どうやら、直近で信託契約に関して裁判所で無効になる判決が出たようです。
まだ下級審なのでなんともいえませんが、今後の実務で影響が出る可能性があります。
なお、巷で家族信託という言葉が浸透していますが、商標登録をしているとのことで、このブログではあえて民事信託ということばで以下は統一していきます。
遺留分と信託の問題
相続で解決できない遺留分の問題 信託で解決?
遺言でカバーできない問題の一つに「遺留分」があります。
いくら遺言で全部を誰かに相続しても、結局は遺留分権利者にいくらかもっていかれます。
相続法改正で遺留分に関する部分は大幅に変わりますが、それでも遺留分制度そのものがなくなるわけではありません。
そこで、信託を活用して遺留分権利者に残さないスキームをつくり、信託契約書を作成するというものがでました。
一方当事者には有利になるし、遺留分権利者にしてはたまったものではありませんね。
東京地方裁判所平成30年9月21日の判決では、「信託を使えば遺留分は消える」との考えのもとに作成された、受益者連続型信託契約の契約(信託行為)は違法であると判示しました。
違法である以上、信託行為は無効となるということになります。
まだ確定した裁判になっているか不明ですが、信託ブームに警笛を鳴らすと評している方もいます。
民事信託にもメリット・デメリットがあることを理解すべき
話題になっている成年後見制度。
後見開始の審判を受けてしまうと、被後見人の財産は後見人管理下に置かれてしまいます。
そうなると、いくら被後見人の親族であっても勝手に財産を使うことができません。
その後見制度のデメリットをカバーしようと民事信託を活用しようとする動きがあります。
ただ、問題なのは、信託を活用すれば後見制度は要らないといっている方がいること。
実際には、民事信託を活用したからといって、成年後見制度を排除することは難しいです。
むしろ民事信託と成年後見制度を併存して行うべきだと思います。
士業専門家が、なんでも民事信託にしようとする動きがありますが、正直それだと今回の遺留分みたいに否定されるとたちまちトラブルになることもあります。
信託を組成した士業専門家にも責任問題、賠償問題が出るでしょう。
信託でできること、できないことを依頼者に説明し、お互いの考えを考慮した上で信託行為を行わないといけません。
私も民事信託の案件がきたら注意しなければならないと感じています。
まとめ
どれか一方の利益を重要視するあまり、他方の利益を排除する。
そのような信託行為について、裁判所は警笛を鳴らしたと今回の遺留分と信託の件で感じました。
依頼者にはメリット・デメリットを説明し信託行為をする必要があると改めて思いました。
今回は
『最近の民事信託(家族信託)の問題から考えないといけないこと』
に関する内容でした。
あわせて読みたい
相続法改正については下記のブログも御覧ください。
参考書籍
改訂版 家族信託活用マニュアル
河合 保弘 日本法令 2018-07-04
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