就任承諾書に本人確認証明書が必要なのか?
前回、
商業登記規則61条5項の疑問点
について書きました。
61条の並び順から見ると、5項は2項から
4項に当てはまらない場合、はじめて
適用されるのかと読めます。
なので、61条5項が適用されるのは、
中小企業レベルでいうと
- 取締役会設置会社の平取締役就任のときと
- 監査役を置いた会社の監査役の就任登記
くらいしかないように思うのです。
そこでもう一度、商業登記規則61条5項の
条文を見てみましょう。
・商業登記規則第61条第5項
設立の登記又は取締役、監査役(一部略)
(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、
設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、
取締役、監査役又は執行役が就任を承諾したことを
証する書面に記載した住所につき市区町村長
その他の公務員が職務上作成した証明書を
添付しなければならない。
ただし、登記の申請書に第61条第2項又は
第4項の規定により当該取締役等の印鑑につき
市区町村長作成した証明書を添付する場合は、
この限りでない。
取締役会議事録に実印を押した場合は61条5項ただし書きに該当するか?
事例
取締役会設置会社取締役 A・B・C
代表取締役 A
監査役 D今回AとBとDが辞任し、
後任者として取締役 E・F
代表取締役 E
監査役 Gを選任した。
代表取締役Eについては、就任承諾書に
実印を押印します。
なので、61条5項ただし書きに該当し、
就任承諾書に住所の記載や
本人確認証明書がなくても問題ないと
思われます。
問題はEとG
商業登記規則61条4項を見ると
商業登記規則第61条4項
代表取締役(一部略)の就任による
変更の登記の申請書には、
次の各号に掲げる場合の区分に応じ、
それぞれ該当各号に定める印鑑につき
市区町村長の作成した証明書を
添付しなければならない。
ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役が
登記所に提出している印鑑とが同一である
ときは、この限りでない。三 取締役会の決議によって代表取締役を
選定した場合
出席した取締役及び監査役が取締役会に
押印した印鑑
商業登記規則61条4項3号を読むと、
今回の事例では、取締役会議事録に
前の代表取締役は既にやめているので、
会社の印鑑を押すことができません。
となると、
新たに代表取締役を選ぶ際の
取締役会議事録には、
出席した取締役・監査役は全員
個人実印を押す必要
があります。
さらには印鑑証明書の添付も要します。
そこで、
今回新たに役員として選ばれた
取締役Fと監査役Gは、取締役会に出席
すれば、実印押印と印鑑証明書の添付が
必要となります。
ここで
FとGについて、商業登記規則61条5項ただし書きが
適用になるのではないか・・・
となると、
FとGについては就任承諾書の住所記載の
省略と本人確認証明書の添付を要しない
と考えることができそうな気がするのです。
一点注意していただきたいことは、
監査役の権限が会計監査限定のみの
場合は必ずしも取締役会に出席する義務は
ありません。
監査役については、
本人確認証明書と就任承諾書の住所記載は
省略できないこともあり得ますので、
注意が必要でしょう。
書いてきて、頭がちょっと混乱しそうですが、
個人的な意見として
就任承諾書には住所は記載させるべきで
それについては本人確認証明書を
要求しておいたほうがいいかと
思うのですが・・・
昨日の投稿も合わせてご覧ください!
新たに取締役が就任されても本人確認証明書がいらない場合はあるの?【司法書士の業務日誌】 | 司法書士行政書士きりがやブログ(きりログ)
平成27年施行 改正会社法と商業登記の最新実務論点
金子 登志雄 中央経済社 2015-11-18
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