ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 鉄道大好き司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
「自分の会社は有限会社のままでずっときました。
今度株式を発行して資本金を増やしたいのですが、特例有限会社でもそのような手続はできますか?」
有限会社(特例有限会社)は、会社法改正に伴い、株式会社とほぼ同じ扱いとなりました。
ところで、特例有限会社でも許認可等の関係で資本金を増加させる手続は可能なのでしょうか?
今回は特例有限会社と資本金の額の増加について書きます。
特例有限会社~募集株式を発行して増資ができるのか?
特例有限会社も増資は可能か?
平成18年5月1日より「有限会社法」が廃止され、会社法に一本化されました。
有限会社に関する法律の適用については原則会社法によります。
もし、整備法という法律に別段の定めがあればそれに従います。
整備法には特例有限会社の増資に関する規定がないため、会社法の規定に従って増資を行うことができます。
資本金を増やす方法には、株式を発行して、出資を引き受ける方に払ってもらう方法のほかにも、準備金を資本に組み入れる方法もあります。
準備金を資本に組み入れても、貸借対照表の純資産の部の数字が変わるだけで、資産が増えるわけではありません。
一般の方が増資というと、資産が増えるというイメージがあるようですが、準備金を資本金に振り替えるのも「増資」と認識しておきましょう。
今回は、特例有限会社で株式を発行して株主やその他第三者に出資してもらう増資についての注意点を書きます。
いわゆる「募集株式の発行」についてです。
特例有限会社になって初めて増資する場合、注意することは?
平成18年会社法改正により、特例有限会社の定款の規定が変更になっています。
有限会社の定款の記載事項であった、「出資の口数及び1口の金額」については削除されました。
それとともに「発行可能株式総数」に変更しました。
有限会社にあっては、会社法施行時には発行可能株式総数は資本の総額を出資1口の金額で除して得た数となるので、発行済株式総数と一致します。
「発行可能株式総数」は株式の枠をどのくらい増やせるのかを示すもの。
授権枠といわれるもので、その枠内であれば自由に株式を発行できます。
これが特例有限会社の場合は厄介で、会社法改正で「発行可能株式総数」が登記事項になったのですが、その数は「発行済株式総数」と同数になっています。
有限会社で募集株式をはじめて発行する際は、同時に発行可能株式総数で枠を増加する定款変更決議が株主総会で必要になりますので注意してください。
なので、特例有限会社で会社法施行後、初めて募集株式を発行するときは、別途定款変更分(発行可能株式総数の変更)として登録免許税が3万円かかります。
平成18年5月の会社法改正後に初めて募集株式の発行の登記を申請する場合は、あわせて「発行可能株式総数の変更」の登記も必要だということをお忘れなく。
忘れてしまうと、募集株式発行の登記を取り下げることになってしまうので・・・
募集株式発行の募集決議・定款変更決議についての注意点は?
募集株式の募集事項の決定については、株主総会の特別決議となります。
発行可能株式総数の枠の増加による定款変更決議も株主総会の特別決議が必要です。
有限会社の株主総会の特別決議ですが、株式会社の特別決議の要件と異なります。
有限会社の特別決議の要件は、以下のとおりとなります。
株式会社と比べ要件が厳格になりますので注意してください。
まとめ
特例有限会社の場合も募集株式の発行で増資をすることは可能です。
ただし、発行可能株式総数の枠の増加と募集株式の募集事項の決定の際の株主総会の特別決議の要件に注意してください。
今回は
『特例有限会社~募集株式を発行して増資ができるのか?』
に関する内容でした。
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参考書籍
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