東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
令和5年4月1日に民法・不動産登記の改正がありました。
それに伴い、一部の登記手続きにも変化が出てきています。
変わったものの一つに「相続人に対する遺贈による所有権移転登記」の手続があります。
今回は、「遺贈を受けた相続人がする遺贈による所有権移転登記手続」について紹介します。
あくまでも相続人に対する「遺贈」が今回の対象となり、孫とか相続人でない人に「遺贈」する場合は、この方法ができないので注意してください。
基本は法務省から公表されている資料をもとに紹介していきます。
登記手続の前に そもそも「遺贈」って何?
あなたは「遺贈」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
なんとなく知っている方もいるでしょう。あらためてここで「遺贈」の定義を紹介しておきます。
「遺贈」とは、遺言によって遺言者から無償で財産を譲り受けることを言います。
贈与をした人を「遺贈者」、遺贈を受けた人を「受贈者」と言います。
「遺言書」に書いておかないと、そもそも「遺贈」の問題は出てこないことを知っておいてください。
今回の登記手続きで変わるのは「相続人」に対する遺贈であり、「相続人以外」の遺贈は対象外ですので注意してください。
「受贈者」が第三者の場合は、現行通り、共同申請で行う必要があります。
いずれにしても、「遺言書を書く」というのは、これからの時代はますます重要になってきます。
遺贈による所有権移転登記の流れを知っておきましょう!
遺贈による所有権移転登記の手続きは以下の流れになります。
まずは「登記申請書」の作成。
申請書を書くだけではなく、登記申請に必要な添付書面の準備も必要です。
次に登記申請書を添付書面と一緒に管轄法務局に提出します。
注意なのは、自宅近くの法務局に提出するのではなく、不動産の所在地を管轄する法務局に申請書を提出すること。
法務局で登記申請書と添付書面を審査し、問題がなければ登記完了です。
登記完了予定日までに法務局から電話がなければ登記は完了します。
しかし、何か添付書面や申請書に不備があるときは、法務局から電話があります。
修正する箇所があれば速やかに修正しないと、いつまで経っても登記は完了しません。
登記申請書の作成方法・提出方法はどうすればいいのか?
登記申請書は、法務省のホームページからダウンロードして作成することができます。
そこには、記載方法も詳細に書いてあるので、それを参考に申請書を作成します。
なお、登記申請の方法は、以下の3つがあります。
・法務局の窓口に直接持参する方法
・申請書を郵送する方法
・法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で登記申請書を作成し、オンラインで送信する方法
司法書士に依頼しない場合は、書面で申請することが多いと思われます。
遺贈を受けた相続人がする遺贈による所有権移転登記の申請について
遺贈の登記に際して、まず用語の説明をしていきます。
遺贈により不動産を取得した相続人を「受遺者」といい、登記申請では登記権利者となります。
一方、遺贈をした人を「遺贈者」といい、登記申請では登記義務者となります。
令和5年4月1日以前までは、「遺贈」による所有権移転登記は、登記権利者(受遺者)と登記義務者(遺贈者の相続人全員)で行う必要がありました。
しかし、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、その所有権移転登記を受遺者単独ですることができます。
令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても、今後単独で所有権移転登記を申請することができます。
なお、令和6年4月1日から、この登記は義務化されるので注意してください。
遺贈による所有権移転登記の添付書面は?
添付書面としては、登記原因証明情報と住民票が必要となります。
「登記原因証明情報」は登記がなぜ起きたのかを法務局に知らせるための書面だと覚えておいてください。
今回の「遺贈による所有権移転登記」では登記原因証明情報として必要なのは「遺言書」と「戸籍謄本」です。
遺言書は公正証書遺言であれば、そのまま添付書面とできます。
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認済証明書付きのものが必要になります。
ただし、自筆証書遺言を法務局で保管してあるものを使用する場合は、家庭裁判所の検認は不要です。
戸籍謄本については、遺贈者の死亡の事実の記載のある戸籍全部事項証明書もしくは除籍全部事項証明書が必要です。
なぜ必要なのかというと、今回の遺贈による所有権移転登記の登記原因は遺贈者の亡くなった日となるからです。
なので、亡くなった日を証するために戸籍謄本を添付します。
さらに遺贈を受けた相続人(受遺者)の戸籍事項証明書等が必要です。
これは受遺者が遺贈者の相続人であるかを確認するためです。
注意なのは、受遺者の戸籍謄本は、遺贈の効力発生日以後のものでないといけません。
なお、遺贈者の最後の住所及び氏名が登記記録上の住所及び氏名と異なる場合や、遺贈者の本籍が登記記録上の住所と異なる場合は以下のいずれかの書類を添付します。
これは、遺贈者が登記記録上の所有者であることを証明するためです。
・住民票の写し(遺贈者の本籍及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)
・住民票の除票の写し(遺贈者の本籍及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)
・戸籍の附票の写し(戸籍の表示及び登記記録上の住所と同じ住所が記載されているもの)
そのため、遺贈の登記申請の前提として遺贈者の住所変更登記は不要です。
次に必要となる添付書類は「住民票」。
受遺者のものが必要になります。
本籍地入のものをご用意ください。
登記申請の際は原本を添付するのが原則となります。
しかし、遺言書とか原本を法務局に提出してしまうと手元に残らなくなります。
その場合は、原本還付手続をすれば、原本が戻ってきます。
そこで、登記申請の時に、原本還付を請求することで、登記手続きが終わったあとに、原本の返還を受けることができます。
原本還付を請求したい場合は、返還を請求する遺言書や戸籍謄本、住民票をコピーし、そのコピーに「原本に相違ない」と記載して、コピーに署名もしくは記名押印します。
複数枚に渡るときは、ホチキスどめし、つづり目に契印します。
登記申請の際に遺言書や戸籍謄本、住民票のコピーを登記申請書に綴込み、原本と一緒に提出します。
登記が完了したら、原本は登記完了書類とともに返却されます。
遺贈による所有権移転登記の登録免許税は?
登録免許税は、課税価格に税率(1,000分の4)を乗じて計算した額になります。
なお、10円以下の単位は切り捨てになります。
計算した額が1,000円に満たないときは、1,000円となります。
課税価格とは、市区町村で管理している「固定資産課税台帳」に記載してある価格です。
固定資産課税明細書に、一般的に「価格」または「評価額」と表記されている価格が「課税価格」となります。
「固定資産税課税標準額」ではないので注意です。
また、複数の不動産を同一の登記申請書で申請する場合、それぞれの不動産の固定資産課税台帳の価格の合計から、1,000円に満たない金額を切り捨てて課税価格とします。
合計額が1,000円に満たないときは、1,000円となります。
なお、公衆用道路や私道などで「非課税」となっていることがあります。
その場合は、法務局が認定した価格が課税価格となるので、管轄法務局に問い合わせてください。
遺贈による所有権移転登記が完了すると…
登記が完了予定日に終わった場合、法務局の窓口もしくは郵送(申請時にレターパックを提出している場合)にて登記完了書類を受領します。
戻ってくる書類として「登記完了証」「登記識別情報通知」(登記完了後に登記識別情報の通知を希望していない場合は除く)があります。
「登記識別情報通知」は売買や抵当権設定登記で使うものになるので、大事に保管してください。
「登記完了証」は登記が終わったことを証する書面なので、そこまで重要性はありません。
「登記完了証」よりも「登記識別情報通知」が大事なのだということを押さえてください。
なお、登記事項証明書は登記が終わっても自動的に送られてきません。
なので、自分で法務局が該当不動産の登記事項証明書を取得する必要があります。
それで、登記がきちんとされているかを確認してください。
まとめ
遺贈による所有権移転登記の方法が令和5年4月1日から変わります。
申請書など作る時間が無い場合は、ぜひ司法書士にご相談ください。
今回は
『相続人に対する遺贈による所有権移転登記の方法とは?江戸川区の司法書士が解説』
に関する内容でした。
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