東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
おそらく2018年通常国会で相続法の改正法案が上程されることになると思われます。
今回の相続法の改正では、意外と大掛かりな改正内容が盛り込まれています。
以前このブログでも「自筆証書遺言の要件緩和」について書きました。
今回は配偶者の居住権の問題についてざっくり解説していきます。
相続法改正 「配偶者の居住権」を保護する趣旨は?
相続法改正の中身は?
配偶者の居住権のことを書く前に、今回の相続法改正に関する内容を確認します。
今回の相続法の改正の要綱案は以下のとおりです。
- 配偶者の居住権を保護するための方策
- 遺産分割に関する見直し等
- 遺言制度に関する見直し
- 遺留分制度に関する見直し
- 相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し
なぜ配偶者の居住権を保護するための方策ができたのか?
今回は、相続の改正の目玉のひとつ「配偶者の居住権」について書きます。
現行のままだと、被相続人の財産に属した建物に相続開始のときに居住した配偶者の居住問題がありました。
今回、配偶者の居住権保護の制度を創設するのは大きく分けて2つあります。
一つ目は、高齢化社会の進展があります。
相続開始後に遺言や遺産分割で別の人が建物を所有した場合、配偶者は出ていかざるを得ない状況にあり、住むところがなくなってしまう問題も出てきました。
配偶者の一方(被相続人)が亡くなったとき、他方の配偶者は、今まで住んでいた建物に引き続き住みたいと思うのが一般人の考えです。
特に生存配偶者が高齢の場合、住み慣れた建物を離れ、新たな建物に引っ越しをするのは精神的にも肉体的にも大きな負担に。
そこで、今回の相続法改正を契機に配偶者の居住権を保護する制度ができました。
二つ目は夫婦の親族としての緊密性の観点です。
夫婦は、相互に同居・協力。扶助義務を負うことや、配偶者は一親等でもないことなど、法律上最も緊密な関係にある親族であるとされています。
それを考慮して、今回は配偶者に限って居住権を保護してもいいだろうというのが今回の制度を創設した理由です。
配偶者の居住権を保護する制度の全体像は?
配偶者の居住権には「配偶者短期居住権(短期居住権)」と「配偶者居住権(長期居住権)」の2種類があります。
まず「配偶者短期居住権」のみを取得するパターン。
この方法は2つのパターンがあります。
一つ目は、配偶者が加わる遺産分割の協議又は審判において配偶者居住権が成立しなかった場合で、かつ、配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺贈及び死因贈与がないときです。
この場合は、配偶者は遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、配偶者短期居住権を取得します。
二つ目は、一つ目の場合以外で、居住建物について配偶者以外の者が相続又は遺贈により所有権を取得し、相続開始後に当該所有者が配偶者に対して配偶者短期居住権の消滅の申し出をしたときです。
配偶者は、上記申入れから6か月を経過するまでの間、当該取得者に対して、配偶者短期居住権を有します。
次に配偶者短期居住権を取得したのち配偶者居住権に移行するパターンです。
まず、配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺贈及び死因贈与がなかったため相続開始と同時に配偶者短期居住権が成立します。
その後遺産分割協議の成立又は遺産分割の審判の確定により配偶者居住権に移行するケースです。
最後に配偶者居住権のみを取得するパターンです。
配偶者に配偶者居住権を取得される旨の遺贈又は死因贈与により、相続開始と同時に配偶者居住権が成立する場合があります。
まとめ
配偶者居住権については登記も発生することになり、様々な角度で検討する必要があります。
また、配偶者居住権の登記事項については改めて紹介します。
今回のまとめとして
- 配偶者の居住権には「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」がある
- 配偶者短期居住権の取得には2パターンある
- 配偶者短期居住権から配偶者居住権への移行もあるし配偶者居住権のみを取得するパターンもある
ということをまずは押さえておくといいでしょう。
今回は
『相続法改正 「配偶者の居住権」を保護する趣旨は?』
に関する内容でした。
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わかる! 相続法改正
日本司法書士会連合会 中央経済社 2017-01-13
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