東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
株主も取締役も自分ひとりの会社。
自分が亡くなれば、株主は相続人が承継し、株主が新たに取締役を選任すれば、一応会社をそのまま継続させることは可能です。
もし、経営者であるあなたが成年被後見人となったらちょっと厄介な問題になります。
ひとり株式会社の問題点 もし経営者のあなたが成年被後見人となったら・・・
取締役の地位はどうなるか?
もし、あなたが判断能力が劣り、通常の意思表示がままならなくなった場合、経営者として問題がでてきます。
つまり、取締役の地位でいられるかという問題です。
会社法で、成年被後見人、被保佐人となった場合は、取締役の地位を失うとの規定があります。
一方、被補助人の場合は、取締役の欠格事由になっていません。
もし、自分が成年被後見人になったら、たちまち会社は機能しなくなるリスクがある。
そのことを「ひとり株式会社」の経営者は覚えておくべきです。
株主の地位はどうなるか?
成年被後見人となった場合、判断能力がないため、株主として議決権は行使することはできません。
そうなると誰が議決権を行使できるのか?
原則、成年後見人が法定代理人の地位に基づき議決権を行使します。
問題は定款で「代理人は当会社の株主に限る」となっていた場合。
上記規定の場合、専門職など第三者が成年後見人だと、その会社の議決権を行使できなくなる可能性があります。
そうなるとたちまちデットロック状態になり、会社が全く機能しなくなります。
一方、被保佐人、被補助人が株主の場合、本人が原則議決権を行使することはできません。
代理人である保佐人や補助人が被保佐人・被補助人に代わって議決権を行使できるかについては否定的意見が多いです。
被保佐人・被補助人の審判を受けた場合、被保佐人・被補助人に代わって議決権を行使する旨、代理権付与の審判を受ける必要があるでしょう。
なお、被後見人の株式を親族や後継者に渡す場合は財産の処分に該当し、家庭裁判所の許可が必要です。
果たして、株式の譲渡につき、家庭裁判所が許可を出すのかについては分かりません。
任意後見の場合はどうか?
任意後見は経営者が元気な状態のときに、本人と親族・第三者との間で任意後見契約を交わします。
必要なことは契約に盛り込むことが可能なので、自分に何かあった時、任意後見人に議決権を行使させる内容はできます。
(議決権を行使できないという説も有力)
一方、任意後見になった場合、取締役の資格が喪失するかについては、会社法では定めがありません。
なので、資格喪失することなく地位が以前のままになりますが、果たしてそれでいいのかは問題になります。
やはり、任意後見状態だと会社経営はままならないので、退任させるべきです。
任意後見状態になることを想定して、あらかじめ取締役を予選するなどの対応が必要です。
まとめ
ひとり株式会社の場合、自分の身に何か起きたときに会社経営が対処できなくなるのがデメリットです。
そのデメリットが顕著に現れるのが成年被後見人となった場合です。
リスクを最小限に抑えるためにも、取締役の予選や株式の後継者への譲渡など対策を講じることも重要です。
今回は
『ひとり株式会社の問題点 もし経営者のあなたが成年被後見人となったら・・・』
に関する内容でした。
成年被後見人制度に関する参考書籍はこちらから
新成年後見制度の解説【改訂版】
小林 昭彦,大門 匡,岩井 伸晃,福本 修也,岡田 伸太,原 司,西岡 慶記 きんざい 2017-12-13
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