東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
前々回のブログで株式会社の利益相反取引の概要について触れました。
どのような場合に利益相反取引に当たるのかを書きましたので、ぜひご覧ください。
今回は、利益相反取引に該当する場合の添付書面となる議事録の留意点について書きます。
中小零細企業と不動産取引 利益相反取引にする議事録についての注意事項は?
取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社の場合、利益相反取引に該当する場合、取締役会で承認決議をします。
承認決議をするにあたり、以下の点に気をつける必要があります。
議決権を行使できる者は?
利益相反取引については、特別利害関係人である取締役は議決権を行使することができません。
極端な例ですが、取締役3名いて、2名が特別利害関係人である場合は、特別利害関係人でない取締役1名で、有効に決議をすることができます。
また、甲会社・乙会社の不動産売買契約で代表取締役が両会社とも同じである場合は、利益相反取引の承認決議について、その代表取締役は議決権を行使することができることに注意して下さい。
これは、売買契約の当事者が甲会社・乙会社であり、代表取締役は特別利害関係人に該当しないからです。
ただ、売買による所有権移転登記に際しては、甲会社・乙会社とも取締役会議事録は添付しなければなりません。
議事録の記名押印者は誰か?
取締役会議事録については、出席取締役及び監査役が署名又は記名押印しなければなりません。
代表取締役が特別利害関係人であっても、取締役会に出席しているのであれば、署名又は記名押印する必要があります。
監査役については、業務監査権を有する監査役は出席義務はあります。一方会計限定監査役は取締役会に出席義務はありません。
しかし会計限定監査役であっても利益相反取引承認に関する取締役会に出席した場合は、署名又は記名押印しなければなりません。
押印については、代表取締役は法務局に届けている印鑑と同じ印鑑を議事録に押印し、会社の印鑑証明書を添付します。
他の出席取締役・監査役は市区町村長の発行に係る印鑑証明書の印鑑(実印)を押印し、印鑑証明書を添付します。
取締役会非設置会社の場合
取締役会非設置会社の場合、利益相反取引に該当する場合、利益相反取引の承認は株主総会の普通決議で行います。
承認決議をするにあたり、以下の点に気をつける必要があります。
議決権を行使できる者は?
この利益相反取引に関する決議は、当事者である特別利害関係人も株主総会で議決権を行使することができます。
ただし、利害関係人の議決権行使によって著しく不当な決議をされた場合は、株主総会決議取消の訴えの対象となります。
議事録の記名押印者は誰か?
株主総会議事録については、議事録作成者が記名押印しなければなりません。
議事録作成者として多いのは、代表取締役ですが、他の取締役であっても構いません。
議事録の押印ですが、代表取締役の場合は法務局に届けている印鑑と同じ印鑑を、他の取締役が議事録作成者の場合は、市区町村長の発行に係る印鑑証明書と同じ印鑑を押印します。
そして、会社の印鑑証明書若しくは議事録作成者(代表取締役以外)の場合はその者の個人の印鑑証明書が必要です。
なお、議事録作成者以外の出席取締役・出席監査役については、記名押印を要しないと一応はなっています。
しかし、定款で株主総会議事録の署名義務者が出席取締役・出席監査役となっている場合は、その者も署名又は記名押印する必要があると解されます。
その場合は取締役会議事録と同様、代表取締役以外の取締役・監査役は実印押印と印鑑証明書が必要になります。
まとめ
利益相反取引に該当する場合には、株主総会若しくは取締役会で承認決議が必要です。
そして、議事録には会社実印又は個人実印を押印し、印鑑証明書の添付が必要になります。
所有権移転登記などで利益相反取引の承認に関する議事録及び印鑑証明書の添付を失念すると補正の対象となるので注意して下さい。
今回は
『中小零細企業と不動産取引 利益相反取引にする議事録についての注意事項は?』
に関する内容でした。
参考書籍はこちらから
〔補訂版〕利益相反行為の登記実務
青山 修 新日本法規出版 2017-05-22
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