非取締役会設置会社の代表取締役の選定方法 悩ましい問題が…
東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
今回も実務に関することを。
非取締役会設置会社の場合、代表取締役の選定方法をどうするかで、意外と実務家は悩むところがあります。
今回は、ひとり株式会社であっても知っていてほしい「非取締役会設置会社の代表取締役の選定方法」の悩ましい問題点について書きます。
非取締役会設置会社の代表取締役の選定方法 悩ましい問題が…
非取締役会設置会社の代表取締役の選定方法は?
非取締役会設置会社の株式会社にあっては、原則各取締役が代表取締役であり、取締役が1名であっても同人が代表取締役となります。
代表取締役の選び方については
・定款で直接定める
・株主総会で選定する
・定款の規定に基づき取締役の互選により代表取締役を選定する
と実務上ではなっています。
多くの非取締役会設置会社は雛形の影響からか「定款の規定に基づき取締役の互選をもって代表取締役を定める」にしています。
最近の実務では、代表取締役の選定登記申請の際、定款添付不要の観点から、株主総会で代表取締役を選定するパターンも結構見かけます。
悩ましい問題 代表取締役が欠いた場合の扱い
結構神経を使うのが、取締役が2名いて、うち1名が代表取締役の場合、その代表取締役が亡くなった場合、残りの取締役が代表となり登記申請できるのかという問題。
商業登記ハンドブックには、以下の記載があります。
Ⅰ 登記実務上は代表権剥奪消滅説がとられており、取締役の中から代表取締役を定めることにより、他の取締役の代表権は剥奪され、当該代表取締役が死亡等により退任した場合にも、他の残存取締役の代表権は当然には回復しないと解されている
(商業登記ハンドブック387ページ)
一方で、以下の記述もあります。
Ⅱ 定款に「当会社に取締役2名以内を置き、取締役の互選により代表取締役を1名を置く」などと定めた場合において、代表取締役が死亡により退任したときは、当該定款の定めは、「取締役が2名の場合には、代表取締役を互選により定めるが、取締役が1名の場合には、その者が当然に代表取締役になる」旨の趣旨と解されるため、代表権が法律上当然に回復するわけではないが、当該定款の定めに従って、残存する他の取締役が代表取締役となり、自ら変更登記をすることができると解されている(商業登記ハンドブック388ページ)
個人的には定款の規定に基づく互選規定の場合、定款の定め次第によっては、残りの取締役が会社を代表して登記申請できると思われます。
一方で、株主総会で代表取締役を選定した場合は、他の取締役は代表権を剥奪されているため、残りの取締役では会社を代表して登記申請はできないのかと思われます。
定款の定め方次第で、異なってくるのかとも思われます。
株主総会で代表取締役を選ぶ場合の決議要件と問題点
株主総会で代表取締役を選定するときの決議要件について多少問題となります。
会社法上では、特別決議とすると定めていないため、普通決議で行うことができると思われます。
しかし、取締役等選任決議では、定足数については緩和できるのは議決権を講師することができる株主の議決権の3分の1までとなっています。
なので、代表取締役の選定についても、定足数については緩和することができないと思われます。
これで問題になるのが、株主Aが80%、株主Bが20%保有していて、Aが代表取締役だった場合、Aが死亡して、後任代表取締役を株主総会で選ぶ場合です。
Aの株主が事情により議決権行使ができない状態の場合、Bだけだと定款で普通決議の定足数要件が緩和されていても、役員選任については定足数の緩和は3分の1までなので、B単独では議決権を講師できないということになります。
となると、いつまで経っても株主総会で代表取締役を選ぶことができない事態になる可能性があります。
これは意外と厄介なことになるので、定款でケアする必要があるように感じます。
まとめ
代表取締役の選定方法についても、ただ雛形を真似るのではなくて、色々な角度で検討する必要があります。
代表取締役の選定方法を株主総会または定款の規定に基づく取締役の互選というふうに選択できる方法で検討するのもありです。
今回は
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に関する内容でした。
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参考書籍
商業登記ハンドブック〔第4版〕 | ||||
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