株主総会で取締役が解任された場合どうすればいいか【実例で学ぶ商業登記】
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 鉄道大好き司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
某定食店を運営する会社で、経営陣である社長を含む取締役が臨時株主総会で解任され、新たに取締役を選任したという事案がありました。
こういうのは、司法書士試験受験生には参考になる事案なので、どんな登記をすべきで添付書面は何かを検討してみましょう。
なお、事案は簡素化しています。
株主総会で取締役が解任された場合どうすればいいか【実例で学ぶ商業登記】
事案
取締役会設置会社で、取締役がA、B、C、代表取締役がAの株式会社
株主総会でA及びBの解任決議が可決され、D・Eが後任者として選任され、代表取締役がDが取締役会で選任された場合、どのような登記を申請し、添付書面はどうなるか?
検討事項(取締役の解任要件)
まずは、株主総会での取締役の解任決議ですが、決議要件を確認しておきましょう。
解任決議は定款に別段の定めがない限り、選任決議同様の決議要件でできます。
原則は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の過半数の賛成で解任することができます。
ただし、定款で普通決議の定足数を排除している場合でも、総株主の議決権の3分の1の出席は必要です。
定款で別段の定めで多いのは、解任は重いものなので、決議要件を特別決議並みにしている会社もあります。
また、「解任」には正当な理由が必要であるところ、正当な理由なき解任決議で可決された場合、解任された取締役から損害賠償されるリスクがあるので注意してください。
検討事項(代表取締役の選任)
取締役Aが解任されたので、自動的に代表取締役の地位も失います。
なので、代表取締役の選任を定款に別段の規定がない限り取締役会で行います。
今回はC・D・Eの出席で過半数の賛成があればDを選ぶことが可能です。
なお、すでにA・Bは取締役として解任されていますので、出席することはできません。
これはあとあと、議事録の捺印で問題になってきます。
検討事項(登記事項)
登記すべき内容としては、A・Bの取締役解任による退任登記、代表取締役Aの退任、取締役D・Eの就任登記及び代表取締役Dの就任登記です。
添付書面は、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、印鑑証明書、本人確認証明書となります。
ひとつずつ検討していきます。
まず、取締役会議事録ですが、代表取締役を選任したときの議事録については、出席取締役全員が実印を押印する必要があります。
出席者に会社実印を押印できる者がいませんので、C・D・Eは議事録に各々の個人実印を押印し、印鑑証明書を用意する必要があります。
就任承諾書ですが、Dは代表取締役として就任するので、実印押印が必須で印鑑証明書も添付する必要があります。
Eは平取締役のため、認印でいいですが、本人確認証明書の添付が必要です。
あと、代表取締役が変わるので、印鑑届書を提出する必要があることを忘れないようにしてください。
まとめ
取締役の解任は結構重い内容となり、正当な理由がないとできないことは意識してください。
登記簿にも「解任」とのるので、第三者からみたらこの会社は何かがあったんだと思われるので体裁を気にする会社の方は注意してください。
今回は
『株主総会で取締役が解任された場合どうすればいいか【実例で学ぶ商業登記】』
に関する内容でした。
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