東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
抵当権の債務者が亡くなりました。
不動産の所有者が亡くなったときは、不動産を引き継ぐ人だけで法務局に登記を申請できますが、債務者の場合、債務を引き継ぐ人だけで登記申請できますか?
相続による変更登記、不動産の所有者が亡くなった場合と、抵当権の債務者が亡くなった場合の登記手続きに何か違いはあるのでしょうか?
抵当権の債務者が亡くなった場合、登記申請はどのようにすればいいのか?
抵当権の債務者の相続人だけで登記申請できるのか?
抵当権の債務者が亡くなった場合、債務は相続人全員が相続分に応じて引き継ぐことになります。
では、その抵当権の債務者の変更登記は、相続人だけで法務局に登記申請をすることができるのか?
答えは債務者だけで登記申請することができません。
抵当権の債務者は債権の内容の変更を伴うものであり、抵当権者と抵当権設定者(所有権者)と共同でしなければなりません。
ただ、登記申請人はあくまでも抵当権設定者なので、相続人全員が登記申請に関わることはありません。
注意していただくのは、抵当権の債務者が担保の対象となっている不動産の所有者でもある場合、抵当権の債務者の変更登記をする前提として、当該不動産の相続登記を申請する必要があります。
つまり、所有権の相続登記が終わっていなければ、抵当権の相続を原因とする債務者の変更登記はすることはできません。
登記申請の方法はどうすればいいのか?
登記は抵当権者と抵当権設定者との共同申請で行います。
登記の目的は「抵当権変更」、登記原因は、「年月日相続」となります。
登記原因の日付は、債務者が亡くなった日つまり相続開始日になります。
変更後の事項はどうなるのか?
抵当権変更なので、必ず変更後の事項を登記申請書に記載します。
変更後の事項は、債務者の相続人全員の住所・氏名を記載します。
もし、遺産分割協議で当該債務を相続人の誰かひとりに引き継がせた場合、その人だけの住所・氏名だけを記載してもいいのでしょうか?
答えは、抵当権者が遺産分割協議の内容を承諾していれば、変更後の事項として債務承継者の氏名・住所だけで大丈夫です。
遺産分割協議で相続人の誰かが債務者になる場合であっても、登記原因の日付は、遺産分割協議成立日でも抵当権者の承諾日でもなく、相続開始日になります。
添付書面と登録免許税は?
まずは添付書面について書きます。
登記原因証明情報は報告形式で行う場合は、債務者が死亡した事実と債務者の相続人全員を記載します。
遺産分割協議で誰かが債務を承継した場合は、遺産分割協議についての成立日と内容、抵当権者が承諾した日付を記載します。
登記原因証明情報を報告形式で行わない場合は、相続を証する書面として、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍・除籍・改製原戸籍と相続人全員の戸籍謄本が必要です。
さらに、遺産分割協議で債務者をひとりにした場合は、別途遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要です。
抵当権者が承諾したことを証する書面は不要とされています。
それと抵当権設定者の登記識別情報通知もしくは登記済証が必要です。
そして司法書士に委任する場合は委任状が必要です。
抵当権設定者の印鑑証明書ですが、債務者の変更による抵当権変更登記では不要です。
登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
まとめ
抵当権の債務者の変更登記の場合、金融機関が絡んでくることがほとんどなので、まずは金融機関に相談されることをおすすめします。
抵当権の債務者の変更登記は債務者の相続人だけで登記申請はできないことを覚えておいてください。
今回は
『抵当権の債務者の相続による変更登記 申請手続はどうすればいいか?』
に関する内容でした。
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不動産に抵当権がついたまま相続登記をした場合「債務者」はどうなるの?
参考書籍
Q&A 抵当権の法律と登記
青山 修 新日本法規出版 2018-04-06
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抵当権・根抵当権に関する登記と実務
山田 猛司 日本加除出版 2016-09-05
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