東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
いま「新しい家族信託」(日本加除出版)
を読んでいます。
新しい家族信託―遺言相続、後見に代替する信託の実際の活用法と文例
遠藤 英嗣 日本加除出版 2016-04
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「遺言書」を記載すれば何とかなるだろう、
と思っていると意外なところに落とし穴が。
遺言者が認知症になり、
後見開始の審判を受けたときが問題に
なります。
遺言書の有無がはっきり分かっていれば
問題はないのですが・・・
現在裁判所では、後見制度の一環として
「後見制度支援信託制度」
を導入しています。
遺言の有無でこの制度が使えるかどうか
決まってきます。
そもそも「後見制度支援信託」とは
どういう制度なのでしょうか?
後見制度支援信託とは何か?
後見制度支援信託は、
裁判所が最近勧めているスキーム。
500万円以上の預貯金等を解約させ、
その解約した金銭を信託財産として、
本人の法定代理人である成年後見人と
信託銀行との間で信託契約を締結する
ものです。
金額については裁判所によって
まちまちのようです。
親族後見人が被後見人の財産を
使い込むことを防ぐために、
このような信託を後見制度の一つとして
始めています。
信託をすることで、当然被後見人の
財産とは隔離されることになるので
使い込みされることは防げるという
ことになります。
今では司法書士などの専門後見人が
いる場合でも、後見制度支援信託が
活用されています。
遺言がある場合には後見制度支援信託は利用できない
後見制度支援信託は、
遺言がある場合には利用できない
という欠点があります。
ただ、遺言があるかどうかは、
分からないことが多いのも事実です。
それを知らずに後見制度支援信託を
してしまうと、問題が起こりえます。
信託財産となる金銭については
被後見人本人のものではなくなり、
相続財産からも除外されます。
となると、
遺言でその財産を渡す人がいる場合、
相続財産を処分したということになり、
遺言が無効になることも考えられます。
遺言があるにもかかわらず
遺言に記載された財産が
後見制度支援信託の対象となった場合、
どうするべきかということは
今後も議論の余地ありです。
任意後見制度の活用も視野に入れる
特に会社経営されている方は、
後見・保佐類型に該当すると、
取締役の資格喪失原因になります。
しかも、株式の権利行使もできなくなり
ひとり株主の会社だとたちまち経営も
回らなくなってしまいます。
そのようなことを回避するために
任意後見制度の活用
も選択肢のひとつです。
任意後見制度は元気なうちに
契約を結ぶことができるので、
自分の財産をどうしたいのか、
意思をハッキリさせることが出来ます。
任意後見契約を締結する場合は
公正証書遺言もセットに作る場合が
多いです。
ただ、任意後見契約の効力が発生した際、
任意後見契約に基づき任意後見人が
被後見人に代わって議決権を行使できるか
については議論があります。
それでも、
任意後見契約を締結することは
会社経営について、
リスク対策のひとつです。
まとめ
後見制度支援信託は、後見人の使い込みを
防ぐ趣旨で始まりました。
ただ、使い勝手が良くない場面も
出てきます。
中小零細企業の経営者の場合は、
リスク対策として任意後見制度の活用も
考えるといいでしょう。
参考書籍
新しい家族信託―遺言相続、後見に代替する信託の実際の活用法と文例
遠藤 英嗣 日本加除出版 2016-04
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