東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
平成27年2月に商業登記規則が改正されました。
その際、取締役や監査役の就任につき、就任承諾書に住所を記載する必要があります。
ただし、取締役の就任登記で印鑑証明書を添付する際は就任承諾書に住所の記載が必要かどうかについて論点がでてきました。
取締役就任で印鑑証明書を添付する際に就任承諾書に住所記載は必要か?
取締役の就任承諾書に印鑑証明書を添付する場合とは?
平成27年2月の商業登記規則の改正で新たに第61条7項が加わりました。
この条文では、設立の登記又は取締役等の就任による変更登記の申請書には、取締役等の就任承諾書に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている住民票や運転免許証等の写しを添付しなければならないとされています。
ただ、再任の場合は除かれています。
さらに、就任承諾書に実印で押印し、印鑑証明書を添付した場合はこの限りでないとただし書きで規定されています。
ただし書きが適用される場合は、取締役会非設置会社の取締役の就任のときが該当します。
印鑑証明書を添付したときに住所の記載が必要か?
「取締役の就任承諾書に実印を押印し、印鑑証明書を添付する場合には、就任承諾書に住所の記載が不要である」
商業登記規則61条7項に規定してあると思っていました。
どうやら、最近東京法務局で、就任承諾書に印鑑証明書を添付した場合であっても、就任承諾書には住所の記載がなければならないと解釈しているようで、そのように実務も運用しています。
商業登記規則で本人確認証明書も就任承諾書に住所の記載も不要だと条文上読めるのですが・・・
なお、商業登記法コンメンタール193ページでは、この考え方には否定的です。
なぜ、法務局は、印鑑証明書で住所も氏名も実在している人を特定しているのに、就任承諾書に住所の記載を要するのか理解に苦しみます。
就任承諾書に本人の実印が押印してあれば、本人が実在していることが明らかになると思うのですが・・・
形式的に住所を記載してほしいということだけなのでしょうか。
そうなると再任の場合も本人確認証明書を添付する必要がなくても、就任承諾書に住所を記載する考えも成り立ってしまいます。
実務での対応はどうすればいいのか?
取締役会非設置会社の取締役の就任登記や再任登記の際の就任承諾書の住所の記載について、東京法務局の根拠が待たれます。
いずれにしても、現状東京法務局管轄で印鑑証明書を添付する就任登記や再任登記の場合でも住所の記載はしておいたほうが無難といえます。
まとめ
私見では、印鑑証明書を添付する際や再任の際の就任承諾書には住所の記載まで要求するものではないと思っています。
法務局はなぜ、上記の扱いで住所の記載が必要になったのか明確な根拠を示してほしいです。
一番被害を被るのは、商業登記制度を利用している会社・国民なのですから。
今回は
『商業登記実務編 取締役就任で印鑑証明書を添付する際に就任承諾書に住所記載は必要か?』
に関する内容でした。
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取締役等の役員の任期に関して、あなたの会社では任期満了時はいつかわかりますか?
参考書籍
論点解説 商業登記法コンメンタール
神﨑 満治郎,金子 登志雄,鈴木 龍介,尾方 宏行,小野 絵里,北詰 健太郎,喜屋武 力,草薙 智和,幸先 裕明,立花 宏 きんざい 2017-02-14
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