東京都江戸川区「6回目でやっと司法書士試験に合格した「相続・会社設立」の専門家 登記業務を通じてお客様に寄り添う」 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
私の業務の柱の一つに「相続」「事業承継」「小さな会社の企業法務」の分野があります。
ひとり会社の場合「相続」と「事業承継」は綿密な関係にあります。
今回は、「事業承継対策」のうち、「事業承継を円滑にするための遺留分の特例」について紹介します。
遺留分は「相続」の部分でも揉める部分ですので、遺言を書くときとかもケアしておくことが大事です。
なお、ブログの著者は司法書士・行政書士のため、今回の内容は税務の問題が大きいです。
より具体的な詳細は、税理士などの専門家にご相談ください。
そもそも遺留分とは何か?
遺留分に関する規定は民法第1042条に定めてあります。
条文を紹介します。
第1042条
1 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
1 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
2 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
遺留分は原則として、基礎財産の2分の1(例外は父母だけが相続人の場合は3分の1)となります。
また、兄弟姉妹のみが法定相続人の場合は、遺留分はありません。
「基礎財産」とは、被相続人の相続開始時の遺産に贈与を加算し負債を引いて、特別受益を加算したものになります。
相続の多くの問題は人間関係とともに「遺留分」も絡んでいると言われています。
事業承継における「遺留分」の問題点
推定相続人がいる場合、後継者に自社株式(の全部)を承継させたくても、一定の相続人には遺留分が認められるため、結果として、後継者に自社株式(の全部)を承継させることができなくなります。
遺留分の問題を解決するため、「経営承継円滑化法」によって、「遺留分に関する民法の特例」が定められました。
遺留分に関する民法の特例の内容
この特例を利用するためには、適用要件を満たした上で、「推定相続人全員の合意」を得て、「経済産業大臣の確認」と「家庭裁判所の許可」を受ける必要があります。
適用要件は以下のとおりです。
会社の要件は、中小企業者であり、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業であることが必要です。
先代経営者の要件は、過去又は合意時点において会社の代表者であることが必要です。
後継者の要件は、合意時点において会社の代表者であること及び現経営者からの贈与等により株式を取得したことにより、会社の議決権の過半数を保有していることが必要です。
特例の内容は、経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例制度を活用すると、後継者及び現経営者の推定相続人全員の合意の上で、現経営者から後継者に贈与等された自社株式について、以下のことをすることができます。
・遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)
・遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)
なお、両方を組み合わせることも可能です。
除外合意は、後継者が現経営者から贈与等によって取得した自社株式を、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるので、相続紛争のリスクを抑えつつ、後継者に対して集中的に株式を承継させることができます。
固定合意は、自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないことから、後継者の経営努力により株式価値が増加しても、相続時に想定外の遺留分の主張を受けることがなくなります。
なお、固定する合意時の時価は、合意の時における相当な価額であるとの税理士、公認会計士、弁護士等による証明が必要です。
遺留分に関する民法の特例についての考察
まずは、「推定相続人全員の合意」が得られるかが一番の問題です。
すでに紛争になっている場合は、利用するのが難しいと思われます。
あとは経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要となるため、この制度を利用したい場合は、早めに専門家に相談する必要があります。
つまり「相続対策」と並行して「事業承継対策」を講じる必要があるのです。
事業承継対策は色々な要素が混ざっているので、時間がかかると思ってください。
まとめ
事業承継における「遺留分に関する民法の特例」を利用できそうな会社は早めに活用してください。
合わせて相続対策も変更して行うべきでしょう。
今回は
『遺留分の特例と事業承継:中小企業経営者のためのガイドを江戸川区船堀の司法書士・行政書士が解説』
に関する内容でした。
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