取締役の「解任」について 会社が揉めていると分かってしまいます その理由を司法書士が解説します
東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
役員変更登記。
取締役の退任登記で退任原因は、一番ポピュラーなのは「任期満了退任」。
あとは自分の意思で辞める「辞任」も比較的多いです。
しかし、会社側から辞めさせたいとき「解任」という登記原因があります。
ただ、「解任」はこの会社揉めているなというのを第三者が知ると結構痛手です。
なぜそうなるのかを司法書士が解説します。
取締役の「解任」について 会社が揉めていると分かってしまいます その理由を司法書士が解説します
「解任」と「辞任」の違いを知っておきましょう
意外と経営者の方の中には、「辞任」と「解任」の区別がよく分からないという方が多いです。
「辞任」というのは、自らが会社に対して「辞める」意思を表示するもの。
辞任届を提出する場合がほとんどです。
一方「解任」は、会社の方から取締役に対して辞めさせる行為で、当事者間で決めることができず、株主総会で承認を経る必要があります。
解任の場合、取締役が会社で何かトラブルがあったから会社が対応しなければならない場合が多いです。
登記簿にも「解任」と記載されるため、取引先が登記簿謄本を見たときに、「この会社大丈夫か」と思われてしまい、あまり印象がよくありません。
事実上「解任」であっても、会社と該当取締役との間のお話し合いで「辞任」に落ち着くケースもあり、該当取締役の辞任届の提出で「辞任」にすることが実務では多いです。
「解任」決議の要件は?
先程も書きましたが、「解任」は株主総会の決議で行います。
解任させる理由を諮って、株主の承認を得ることが必要だからです。
まずは会社法第339条を見てみましょう。
(解任)
第339条
1 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第341条
第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
解任の要件は、選任決議同様、株主総会の特殊普通決議で行われます。
なので、定足数要件があるので注意してください。
ただ、解任決議は重い内容のため、会社によっては定款で特別決議で要件を厳しくしているところもあります。
なお、正当な理由のない解任については、当該取締役は会社に対して損害賠償を請求することができます。
特に、当該取締役の任期が残りかなりの年数がある場合は、「正当な理由」でない解任だと、相当な賠償額が出てしまうリスクもあるので、「解任」決議は慎重にされたほうがいいです。
登記手続では、解任決議をした株主総会議事録と株主リストが必要になります。
まとめ
「解任」決議は会社の経営上リスクを伴うことがあることをまずは確認してください。
できれば当該取締役とお話し合いし、穏便に解決したほうが今後の会社運営上いいです。
今回は
『取締役の「解任」について 会社が揉めていると分かってしまいます その理由を司法書士が解説します』
に関する内容でした。
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