取締役会設置会社で株主総会で代表取締役を選任できるか?[小さな会社の企業法務]
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
代表取締役を選ぶのは、取締役会設置会社では取締役会で選定決議をするのが原則。
しかし、取締役会で選ぶとなると、不利益が生じることもあります。
そこで、定款の規定で株主総会で代表取締役を選ぶと規定することはできないのかという問題があります。
今回は、定款の規定に基づく株主総会の決議による代表取締役の選定について書きます。
取締役会設置会社で株主総会で代表取締役を選任できるか?
問題点の所在は?
中小零細企業ではあまり問題にはなりませんが、大会社の中のグループ会社の中に、新事業年度開始のときから、新たな代表取締役にしたいというニーズがあります。
3月の株主総会で4月就任の取締役を選び(予選)、その日の取締役会で新任取締役を代表取締役として選ぶことができるかが問題となっています。
しかし、登記実務においては、取締役会の決議により代表取締役を予選する場合には、取締役会の構成に際し、
- 代表取締役を予選とする時点の取締役と
- 当該代表取締役に選定された取締役が代表取締役に就任する時点との取締役とが同じ
という要件となります。
なので、上記の例だと、取締役会を3月に行うと、取締役が異なることになり、代表取締役を新たに4月にする必要があります。
3月にまだ取締役として就任していないものを4月1日から代表取締役として就任効力が発生するものとする取締役会ができないことを意味します。
そこで、3月開催の株主総会で、4月1日から株主総会で代表取締役を予選することはできないかが問題となったわけです。
ややこしい論点ですが…
実務の動きはどうなのか?
実務では、定款に「代表取締役は株主総会の決議によって定めることができる」という規定を置くことについては、肯定説、否定説がありました。
会社法の規定では、取締役会設置会社においては、取締役会で代表取締役を選定及び解職することになっています。
ただし、株主総会では、会社法に規定する事項だけでなく、定款で定めた事項を株主総会で決議することができる扱いに会社法では規定されています。
しかし、最高裁平成29年2月21日似お手は、代表取締役の選定・解職権限を取締役会に残すものである限り有効であると判示されました。
おそらくですが、定款規定では株主総会でも取締役会でも両方できる趣旨の条項であれば、株主総会でも代表取締役を選定できるというように解釈していいと思われます。
定款に株主総会でも代表取締役を選ぶことができるという規定があれば、4月1日に新しい代表取締役のもと新事業年度を開始したい場合は、3月中の株主総会でできる扱いとなりました。
登記申請時に留意することは?
登記申請時には、株主総会議事録と定款が添付書面になることは確認されるといいでしょう。
あと、取締役が新任の場合は本人確認証明書が必要となります。
最後に、代表取締役を選任した株主総会議事録に押印する印鑑についても、場合によっては出席取締役の実印押印も必要となることもありますので注意してください。
まとめ(活用用法)
非公開会社の取締役会設置会社の場合、定款の規定次第では代表取締役を株主総会でも選ぶことができるということは押さえておくといいでしょう。
特に株主がひとりで、取締役がなかなか集まりにくい場合には、この方法が使えると思われます。
今回は、商事法務No.2211「定款の定めに基づく株主総会の決議による代表取締役の選定」を参考にしたことを記載します。
今回は
『取締役会設置会社で株主総会で代表取締役を選任できるか?[小さな会社の企業法務]』
に関する内容でした。
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参考書籍
商業登記ハンドブック第3版
松井信憲 商事法務 2015年05月20日
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