改正が見送られた事項 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する事項
ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
令和元年の改正会社法で、改正が見送られた事項校があります。
それは、株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する扱いについて。
これは会社法の改正は見送られましたが、法務省令の改正が行われることが見込まれます。
今回「Q&A令和元年改正会社法」(きんざい)250~251ページを参考にさせていただきました。
代表者の記載された登記事項証明書に関する問題点について
改正される経緯となる理由は?
現状、会社の「代表取締役」に関するうち、「住所」「氏名」が登記事項となっています。
「住所」が登記事項となる理由としては、
- 代表者を特定するための情報として重要であること
- 民事訴訟法上の裁判管轄の決定及び送達の場面に置いて、法人に営業所がないときは重要な役割を果たす
などと説明されています。
万が一、会社に対して訴えを起こすときには代表者の住所が一つの資料ということになります。
さらに、中小零細企業の取引実務において、代表者の住所が与信審査や与信管理のために利用されている側面もあり、これがなくなると実務に大きな影響を及ぼすことも懸念されています。
なので、一律に代表者の「住所」を登記事項から外すことは難しいとして、議論されてきました。
法務省令の改正で対応する可能性が
登記事項証明書は、第三者でも簡単に取得することができ、代表者の住所は現状知れ渡ってしまいます。
更には、インターネット登記情報でも気軽に知ることができてしまうので、プライバシーの問題にもつながってきます。
そこで、部会として、以下に関する関係法律に基づく法務省令の改正を求める附帯決議を採択し、法制審議会は、これを原案通り可決しました。
- 株式会社の代表者から、自己がDV防止法等の特定の法律に規定する被害者等であり、更なる被害を受けるおそれがあることを理由として、その住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることを求める旨の申出があった場合、登記官は、当該代表者の住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることができるものとすること
- インターネットを利用した登記情報の提供においては、株式会社の代表者の住所に関する情報を一律に提供しない
おそらく、株式会社に上記は限定していますが、特例有限会社の取締役や監査役、合同会社の代表社員にも適用されるものと思われます。
ただし、登記事項証明書に載せたくないから住所を外してほしいだけだと表示は残ることにはなると思います。
まとめ
代表者の住所は取引通念上、大事な要素が含まれていることから、一定の要件がないと登記事項証明書に表示しないことは難しいものと思われます。
今回は
『改正が見送られた事項 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する事項[司法書士の日常]』
に関する内容でした。
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柳田幸三/西岡祐介 金融財政事情研究会 2020年02月
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