東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
はじめに
監査役の権限を会計監査権限から業務監査権限まで広げたい!
特に上場を目指したい会社であれば、監査役の権限を会計監査のみであれば、業務監査権限まで拡大することは必須です。
その場合どのようにすればいいのでしょうか?
目次
なぜ公開会社でない株式会社の監査役の権限は会計監査のみになったのか?
はじめに、公開会社でない株式会社の監査役の権限についてまとめてみましょう。
平成18年5月以前に設立した株式会社で株式譲渡制限の規定があり、かつ資本金が1億円以下の場合、監査役の権限は、会計監査権限に限られます。
上記会社は、監査役の権限は会計監査のみである旨が定款にみなし規定が存在します。
または、会社法改正後、監査役の権限を会計監査に限定する旨の定款を設け、監査役を置いている会社もあります。
そのような会社が、会社の規模を拡大し、監査役の権限を業務監査権限まで広げたい場合、注意しなければならないことは何でしょうか?
株主総会で監査役の権限の定款変更決議が必要!
まずは定款で監査役の権限が会計監査権限に限られているので、会計監査権限の旨の定款の廃止による定款変更決議をしなければなりません。
これは株主総会の特別決議が必要です。
理由は、会計監査のみの旨の定めは定款に定められているので、定款を変える必要があるからです。
監査役の業務監査権限まで拡大すると任期はどうなるか?
定款変更で、監査役の権限を業務監査権限まで拡大した(=監査役の権限を会計監査のみの定めを廃止した)場合、注意しなければならないことがあります。
それは、監査役の任期。
会計監査権限しか有していなかった監査役を業務監査権限まで業務が広がるため、一度任期を満了させる必要があります。
小の権限を持った権限を大の権限を持たせることはふさわしくないからです。
なので、今いる監査役は監査役の権限を拡大した定款変更決議が生じた地点(普通は総会決議のとき)に退任することになります。
退任理由は「任期満了退任」です。
そこで、以前監査役の権限が会計監査のみであった人を再度、業務監査権限まで拡大した権限をもった監査役として再任できるかが問題となります。
結論は同一人物を監査役として選任することは可能です。
同一人物をき業務監査権限を持った監査役として再任した場合は、「重任」となります。
さらに、会計限定の定款の定めの登記されている場合、業務監査権限まで拡大するときは、
・監査役の登記
・会計限定の定款の定めの登記
は同時にしなければなりません。
会計監査権限のみの旨の登記をしている場合は要注意です。
逆に、監査役の権限を業務監査権限から会計限定に定款変更した場合は、監査役の任期は満了しないことにも注意してください。
まとめ
監査役設置会社において今後監査役を置き続けるのか、監査役の権限をどうするのか考えることがより重要になりました。
ただ単に意味なく置いているのであればこの機会に監査役設置会社を廃止すべきです。
監査役を廃止する費用がかかるからは言い訳でしかありません。
ぜひ監査役を置いている中小企業の経営者の皆様は真剣に考えることが大事です!
今回は
『監査役の権限を会計監査権限から業務監査権限まで広げたい場合、注意すべきことは?』
に関する内容でした。
参考書籍
平成27年施行 改正会社法と商業登記の最新実務論点
金子 登志雄 中央経済社 2015-11-18
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